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生産設備にかかわる仕事、「生産技術」と「保全」の違いとは? - 世界標準の電気設計CAD EPLANブログ

作成者: Admin|Aug 31, 2020 4:00:00 AM

工場などの製造現場ではロボットやコンベア、加工機械や反応器など多種多様な設備が存在します。こういった設備は当然ながら、生産する製品によって必要な技術や仕様が異なり、深く広範な知識や技術が要求されます。そのため設備の導入からメンテナンスにいたるまで、相応の専門的な技術者の存在が不可欠です。そこで、生産設備およびそれにかかわる技術者である生産技術と保全について、簡単に解説していきます。 

設備設計、立上げ、メンテナンスに関係する仕事と違い

新しい製品を作り出すことになれば、新たな製造工場やラインの創設、もしくは既存設備の改造が必要となります。また利益を生み出すためには、立上げ後に安定した操業を実現することが必要です。 

実際に工場に新たな製造設備を導入(もしくは改造)し、生産に臨むケースを考えてみましょう。
大まかに製品を生産するまでのステップは以下の3つに分類されます。

  1. 打ち合わせと設備設計
  2. 工事と立上げ
  3. 生産開始後のメンテンナンスと修理 

会社によって役割に差異があったり、被る部分があったりもしますが、1と2は「生産技術」、3は「保全」の主要業務であることが一般的です。それでは、それぞれの役割についてみてきましょう。

生産技術

生産技術は、生産管理の3要素と呼ばれるQCD(Q:品質、C:コスト、D:納期)を満たす生産システムを構築することが仕事です。つまり「品質を満たし、利益がでるようコストを抑え、納期遅れなく製品を作り出せる設備を作ること」が求められます。また、既存設備の改善をおこなうことも生産技術職の大事な役割です。 

生産技術の担当者には製品に関する知識に加え、モノづくりに対する深い造詣が必要です。加工、計測、制御、メカトロニクスなどの要素だけでなく、安全技術や省エネにも精通していなければ、コストダウンや安定操業には結びつきません。各部門の責任者、場合によっては社外の専門家も交えた打ち合わせを重ね、設備の仕様を決めていきます。 

また、図面作成のための製図やCADなどのソフトウェア操作技術も必須です。そのほかにも加工機械やロボットの操作や設定、自動制御技術に関する知見が必要となるケースもあります。 

このように生産技術は、専門知識と調整能力を駆使し、生産設備の立上げ(もしくは改善)というゴールを目指す役割です。工場の運営においては非常に重要なポジションだと言えるでしょう。

保全

保全は、設備が停止しないようにするための定期的なメンテナンスや、トラブルが出た際は迅速に復旧することが仕事です。このうち前者は予防保全、後者は事後保全と呼称します。

予防保全は、定期的な部品の取り換え、もしくは装置の分解整備(オーバーホール)などをおこないます。近年は故障診断技術や機器自体の自己診断機能が進歩し、劣化が一定の基準を超えた段階で修理をおこなうといった「予知保全」も可能です。 

一方で事後保全は、その名のとおり故障が出た後に修理や部品の交換をおこなうことです。故障に備えて事前に消耗品や調達に時間のかかるモノを予備品として持っておくことで、設備のダウンタイムを短くすることができます。

このように保全業務には、設備をできる限り「完全な状態に保つこと」が求められます。

生産設備

さて、生産技術、保全にかかわる重要な設備である「生産設備」についても、ここで触れておきましょう。

生産設備は、製品の製造をおこなう設備全般の総称です。作る製品によって設備の中身は千差万別ですが、多関節ロボットや加工機械、コンベアなどはイメージしやすいのではないでしょうか。化学プラントでは化学反応をおこなうための反応槽や、原料を混ぜ合わせる巨大な撹拌機(ミキサー)などもあります。

またこのような直接製品を作り出す装置のほか、設備にエネルギーを供給するユーティリティ設備も重要な生産設備となります。たとえば電源を供給するための受配電設備や、バルブの開閉などに利用するエアーを作るコンプレッサ、温水製造や反応槽の昇温などに使用するボイラなどがこれに該当します。

こういったまったく種類の異なる装置群によって、生産活動が可能となるのです。

共通して必要な知識

生産技術と保全の両者に共通して必要な知識は、当然ながら生産設備などの設備に関する知識すべてです。とはいえ全事項に精通しているというのは無理があるため、生産技術、保全ともにどの会社でも専門分野は分かれています。 

メカなど機械設備は機械工学、制御や電気設備は電気工学、原料などの反応工程は化学工学を修めた技術者が担当することになるでしょう。扱う製品や会社ごとに専門領域はまったく異なるため、入社後も知識のインプットを続けることが大切です。 

また、自分の専門以外の分野についてもある程度理解がなければ、業務を進めていくなかで齟齬が生じ、手戻りが増えてしまいます。手戻りが重なると、生産技術の仕事においては設備立上げの遅れ、保全では設備稼働率低下による利益の悪化を招きます。

そのため、自分の専門領域に対する深い知識に加えて、モノづくりに対する広範な知識が必要となります。これから仕事に就かれる方や、すでに従事している方の参考になれば幸いです。

 

参考:

中野金次郎『トコトンやさしいTPMの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ) 』日刊工業新聞社,2005年

菅間正二『図解入門ビジネス生産技術の実践手法がよ~くわかる本』秀和システム,2010年