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製造業の自動化は人員削減ではなく「付加価値の創出のため」 - 世界標準の電気設計CAD EPLANブログ

作成者: Admin|Oct 1, 2020 4:00:00 AM

従来からモノづくり業界で取組みが進んでいる自動化ですが、その考え方や方向性は大きく変化しています。それは社会的なニーズやビジネストレンドの変化によって、「モノ」の作り方や供給の仕方が変化しているからです。

もくじ

製造業の自動化の波

全世界的に消費者の価値観が多様化したことによって、製品に求められる仕様も多種多様化しているのが近年の製造業を取り巻く環境です。
日本でも2000年頃までは大量生産大量消費の時代でした。そして2009年に人口ピークを迎え、リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウィルス感染症など大きな社会変化をきっかけとして、社会のニーズはさらに多様化かつ不確実なものになっています。

それに伴い自動化への考え方も大きく変わってきました。これまでのように大量生産大量消費を前提とした専用機による多品種少量生産の自動化よりも、変種変量生産に対応できる汎用機による自動化への需要が高まり、人機共存を目指すのがトレンドとなっています。

設計も自動化できる事は自動で

特に、2010年代に世界各国が国家主導で動き始めた第4次産業革命は、現在、デジタル技術を用いて社会や事業に変革を起こすDX(デジタルトランスフォーメーション〉と呼ばれる形で広がりを見せています。

製造業ではDXによって、将来的にはデジタルツインと呼ばれる手法で現実世界と仮想デジタル空間の境目を無くし、デジタル主体でモノづくりやサービス、事業形態を変革することが目指されています。その中でも現時点では、データを扱う部分においてIoTやRPA、AIといったデジタル技術の活用が進んでいます。

電気設計の分野に注目すると、従来で仕様書や部品表の作成など、技術的専門性の低い定型的業務まで設計者がおこなっていました。しかしこれらの業務は3DCADやPDM、PRAなどの発展と普及によって、自動化への大きな動きが見られます。最近では3DCADデータによる部品図レスでの見積発注システムや、部品表などのドキュメント自動作成システムによって、設計から調達までの工数削減とリードタイム短縮を実現したといった事例が多く見受けられます。

自動化の目的は人員削減ではない

大量生産のための多品種少量生産の時代の自動化は、生産量の確保や生産性の向上に主眼が置かれ、作業者を休みなく動く機械に置き換える「省人化」が大きな目的でした。そういった時代の背景から、「自動化=人員削減」のイメージをもたれることがあります。

しかし製品ニーズが多品種少量から変種変量になり、加えて人口減少や働き方改革、新型コロナウィルス感染症の影響で労働集約型モデルが見直されはじめたなか、自動化の主目的は省人化ではなくなりました。

本質的には、ロボットやAIといった自律的な労働力の確保によって資本集約型、知識集約型ビジネスモデルへの転換が大きな目的とされています。

自動化で削減できる工数とコスト

現在の自動化は省人化を主な目的としていないと先述しましたが、専門性が低い単純作業や繰り返し作業は話が別です。そういった作業を機械やデジタルツールに置き換えて、「製品やサービスの付加価値をより高めるための業務へ作業者やスタッフを配置転換する」目的であり、そうの意味での省人化は大きなテーマとなっています。

製品の優位性を確保するためには、独創的なアイディアや技術をいち早く形にして市場に届ける必要があります。そのためには設計者や設計部門から設計情報がアウトプットされたら、垂直立上的に製造移行することが重要です。

従来の日本の製造業は設計の品質が多少劣っていても、高い現場力によって改善をおこない、付加価値を高めてきました。しかしながら労働力不足や製品ライフサイクルの短期化によって、現場で長い時間をかけて改善をおこなうことは困難となっています。そのため、設計段階で完成度と付加価値を高めるフロントローディングと呼ばれる手法が注目されています。

フロントローディングでは開発設計にリソースを集中する必要があります。そのため製造に限らず設計、調達業務における付加価値の低い業務は自動化し、人はより高い付加価値を生み出すための業務に従事できるようになることが重要です。

とはいえ、自動化は簡単ではない

製造に限らず、開発設計や調達業務を自動化するのにあたり大きな障壁になるのが、数値データや機械言語として表すことのできない、ノウハウや勘・コツといった属人的知識の数値化や言語化です。

人はどんな高性能なセンサーを使っても検出できない微妙な変化を感じ取れる場合があり、長年の経験によってそれが異常なのか判別し、無意識下で補正してしまう状況判断能力をもっています。今後、AIやIoTの高性能化によってそのレベルを超えることも考えられますが、現段階で微妙な変化への対応というのは、自動化が困難な部分です。

設計領域では、ある設計者が知識として集約しているノウハウを、どのように言語化し、標準化されたデータとして落とし込むか。長年蓄積している企業の設計ノウハウや慣習などを、整理して言語化するかという課題があります。普段の業務と並行して、自動化のための準備をするには、設計者は忙しすぎます。

またデジタル技術による自動化は、機械による自動化とは別の高い専門性が必要です。そのためのデジタル人材は圧倒的に不足しており、その人材不足も自動化を阻害しています。

大変な道を越えてまで、自動化が必要な理由

それでもデジタル技術による、自動化、スマート化の波は民生、産業界問わず、世界的な動きとなっており、確実にビジネスのあり方に変化をもたらしています。

新型コロナウィルス感染症によって人々の考え方や消費行動がガラリと変わったように、社会動向の不確実性も高まっており、2020年度経済産業省ものづくり白書ではダイナミックケイパビリティ【企業変革力】の強化が必要であると報告されています。

この不確実性の時代において企業を存続させるには、社会動向に柔軟に対応し、新たな付加価値を創出する力が必要となります。そのためには、デジタル技術による自動化で高い付加価値を生み出すためのリソース確保が何より重要であり、避けては通れない道であると言えます。

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出展:経済産業省|2020年版 ものづくり白書 (令和元年度 ものづくり基盤技術の振興施策)

公開日:2020年10月1日
最終更新日:2023年3月7日