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意外と知らないワイヤー、ケーブル、ハーネスの違い

作成者: Admin|Sep 7, 2023 10:00:00 PM

「ワイヤー」「ケーブル」「ハーネス」といった導線や金属線の呼び方は分野によって多少の違いはあるものの、製造業に携わっている方であれば、ある程度の使い分けをしているでしょう。用語の認識違いは設計や調達、さらには現場において思わぬミスや事故を誘発しかねません。ここでは、産業機械分野での使い分けを中心に用語の整理をしてみましょう。

もくじ
  1. ワイヤー・ケーブル・ハーネスの違い
  2. それぞれの設計方法
  3. それぞれの製造方法
  4. EPLAN Data Portalには電線メーカーも掲載!

 

ワイヤー・ケーブル・ハーネスの違い

産業機械分野でのワイヤー、ケーブル、ハーネスは、主に電気用配線のことを指すことが一般的です。いずれも銅線が絶縁被覆されている電気配線用部材ですが、製造元によって呼び方もさまざまです。そのため呼称に厳密なルールがあるわけではありませんが、大きくグループ分けをすると、以下のように区別されます。

ワイヤー


単芯の配線用電線。比較的短距離の配線に屋内専用で使用される
引用:EPLAN Data Portalより:太陽ケーブルテック株式会社 電気機器用耐燃性ポリエチレン絶縁電線


引用:EPLAN Data Portal:Rittal SV Cable set, AWG 8, L: 140 mm

ケーブル

複数のワイヤーをシースと呼ばれる外皮でまとめた多芯電線。シースの種類によって耐候性や耐油性を持たせ、屋外で使用されているものもある

引用:EPLAN Data Portal:タツタ立井電線株式会社 UL AWM STYLE 2854 Robot Cable 21AWGx6C

ハーネス

単体または複数のワイヤーの末端を、あらかじめ端子処理やコネクタ処理、ハンダ処理などをして、ほかの機器にワンタッチで接続できるようにした電線。機器間接続に用いられる

引用:EPLAN Data Portal:オムロン株式会社 PLC接続タイプコネクタ端子台変換ユニット専用接続ケーブル

制御盤でいうと、どれがどれ?

次に実際の制御盤の中での使い分けを見ていきましょう。

・ワイヤー

制御盤の中ではかなりの配線がワイヤーにておこなわれます。電流容量に応じた径のワイヤーが、配線用遮断器2次側からの電源配線やPLCから端子台間の配線などに用いられます。PLCから端子台間はハーネスで、端子台から先の機器がワイヤーですね。

一般的にIVワイヤー、KIVワイヤー、KVワイヤーと呼ばれる種類の電線が広く使用されています。これらは被覆色に多くのバリエーションがあり、色によって電源配線と信号配線を識別できるようにしている場合が多いです。

・ケーブル

ケーブルは制御盤の中に電線を引き込む際に多く使用されます。制御盤の中に入ってからはシースを切り取り、それぞれのワイヤーを配線します。先述のとおり、ケーブルは何本かのワイヤーがシースで覆われたもので、そのシースをワイヤーの保護材として利用します。多くの場合、キャブタイヤケーブルと呼ばれる、VCTFケーブルやVCTケーブルが使用されます。特にアクチュエーターに乗せられて動く制御機器への配線は、早期の断線を防ぐため、動く部分のみ耐屈曲性に優れた可とうケーブルをハーネス化して配線します。

また制御点数の少ない小規模装置や古い装置では、制御機器はON/OFFの2値で制御されることから、制御点数分以上の芯数で配線設計し、使わない線は予備として絶縁処理しておくのが一般的でした。この配線手法では、装置の拡張や改造などで予備分をオーバーした場合に新たなケーブル敷設が必要になります。

しかし近年、大規模装置だけではなく小規模装置でもCC-Link系、Ethernet系のフィールドネットワークと呼ばれる機器間をネットワークケーブルで繋ぎ、通信によって制御する手法が一般的になってきており、配線工数の削減と装置拡張性の確保が図られています。

・ハーネス

ハーネスは多くの場合、制御盤の中でモーターやアクチュエーターのそれぞれのドライバーの外部入出力を取り出し、PLCなどの上位コントローラーに接続する場合に使用されます。D-SUBやMILといった多芯コネクタが使用されることが多いです。こちらも先述のように、フィールドネットワークケーブルに置き換わる流れがあります。

また、制御盤の外では断線が懸念され交換が必要だったり、ケーブルを外さないと保守ができなかったりする場合、容易に着脱ができるように特定の区間のみコネクタ接続をしてハーネス化する配線も多く見られます。

それぞれの設計方法

それでは産業機械分野(電線としての用途)でどのように選定され、またその際に気をつけるべきことは何かをそれぞれの設計方法とともに確認していきましょう。

ワイヤー、ケーブル

まず、大前提として国内であればJIS規格、PSE規格、海外であれば各地の工業規格、電気用品規格に適合している電線を選定する必要があります。これらの規格によって電線の安全性にかかわる耐電圧や耐熱といった性能が保証されます。国内で流通している産業用電線の多くは国内規格だけではなく、主要各国の工業規格や電気用品規格にも適合して製造されている場合がほとんどです。

ただし、ワイヤー、ケーブルの被覆やシースはビニルまたはゴム製でできているため、過大な電流によって発生する熱で発火や溶解を起こしてしまい、火災や電気事故を招く可能性があります。そのため、電気設計者はワイヤーやケーブルの持つ許容電流値を超えないような過不足のない電線径の選定と、万が一に過電流が発生した場合に備え、回路を瞬時に遮断する過電流遮断器を回路に組み込む設計が必要です。

ハーネス

ワイヤー、ケーブルを使ってハーネスを制作するので、許容電流値に留意することは同様ですが、産業分野でハーネスが使用されるのは、耐環境性が必要だったり、消耗や保守保全によって電線の着脱が必要だったりする箇所です。その適用は電気設計者、配線施工者の判断に委ねられる場合もありますが、多くの場合クライアントからの要求仕様の確認や機械設計者の判断を仰ぐ必要があります。また配線工数とハーネス部品費用との比較といったコスト的な検討も必要です。

それぞれの製造方法

最後にそれぞれの製造方法を簡単に見ていきましょう。

ワイヤー

銅線には単線とより線の2種類があり、産業機械分野では多くの場合、柔軟性に優れたより線が使用されています。より線は細い銅線をより線装置によって複数本より合わせて1本の電線となっています。また、より合わせた銅線は電線被覆装置にて連続的に外側に被覆が成型され、数十~数千m単位のワイヤー製品となります。

ケーブル

2~50本のワイヤー製品をシース被覆装置で束にして、ワイヤーと同じく束の外側に連続的にシースを成型し数十~数百mをリール状にしてケーブル製品が製造されます。

ハーネス

ハーネスにはバラ線のワイヤーだったり、ケーブルだったり、フラットケーブルといった電線が使用されますが、その末端は着脱可能なコネクタや端子が接続されます。端子やコネクタの加工方法には、電線末端の被覆だけを1㎝程度切り取り、銅線部分に端子を工具で圧着またはハンダ付けする方法が多く用いられます。そして、その複数の端子をハウジングと呼ばれるケースに格納したものをコネクタと呼びます。また、最近では被覆を切り取らず、直接被覆を押し切り銅線と導通を取る圧接といった方法もあります。

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公開日:2021年4月7日
最終更新日:2023年9月8日