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電気設計を勉強するときに押さえておきたいポイント

作成者: Admin|Jun 22, 2021 10:00:00 PM

近年、機械分野のIoTやAIなどのスマートファクトリー化にかかわる技術革新は、ソフトウェア分が担う比重が大きくなっています。それに比べるとハードウェアの変化は小さく見えるかもしれません。しかし、そのソフトウェアの進歩を下支えするのがハードウェアの役割です。ハードウェア技術者としては、知識や見識を常にアップデートする必要があります。ここでは若手から中堅まで、電気設計を勉強するときに押さえておきたい考え方を紹介します。

もくじ

  1. 若手から中堅まで意識すべし!「持続可能な開発目標」の概念
  2. シーケンス設計

若手から中堅まで意識すべし!「持続可能な開発目標」の概念

科学技術の進歩は社会情勢やユーザーからの要請に応え、社会貢献するためのものです。そのため、技術者として社会動向やユーザーニーズに対して敏感である必要があります。

産業機械関連で高まっている社会的ニーズとして大きなヒントになるのはSDGs(持続可能な開発目標)でしょう。SDGsは大局的な項目が並んでいますが、特に9番の「産業と技術革新の基盤を作ろう」と12番の「作る責任、使う責任」について産業界が担う役割は大きく、若手からベテランまで全員が強く意識する必要があります。
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/

引用:国連広報センター|持続可能な開発目標(SDGs)

これからの社会を担う若手~中堅機械技術者は、特にSDGs=社会貢献を意識しながら専門分野の勉強を進めるとさまざまな面で自分の将来のために役立ちます。

電気設計

電気設計で最も重要となるのは、産業機械が使われる地域における工業規格や安全規格に関する法令や規制を遵守した設計を行うことです。法令や規制を正しく理解せず、安易なコストダウンを狙い、粗悪な部材や規格外部材を選定すると、漏電や火災などの事故につながる危険があります。そのため、電気分野では安全性の確保が大きな「作る責任」です。そのためにも工業規格や法規制を正しく理解することが重要となります。

しかし、工業規格や法令の文章は一般的な言い回しではないことが多く、文意を正しく理解するのは困難です。また書店やネット通販では工業規格や法令に関する解説書や参考書が多く取り扱われていますが、産業機械に特化した書籍はごくわずかです。

また産業機械の電気設計は、機械要素と制御をつなぐ役割があります。よって、機械要素、電気、制御に関する幅広い実務的な知識も必要になります。

電気設計のおすすめの勉強方法

そこでおすすめしたいのが、「電気工事士資格の取得」と産業機器資材の「カタログや取扱説明書」による勉強です。

発電所などプラントレベルの産業機械を除けば、電気設計分野で資格は必須ではありません。しかし、設計にあたり実際の工法についての理解は必要であり、盤加工、配線作業でミスは許されません。電気工事士資格試験はマークシートによる筆記試験と実際の配線作業を行う実技試験で構成されています。正しい電気工作知識が必要なのはもちろんのこと、最近の実技試験合格基準見直しにより、軽微な欠陥が1つあるだけで不合格となる、とても集中力が必要な試験となっています。実際に、電気工作物の軽微な欠陥は施工当初は問題が出なくても、経年劣化などで大きな事故につながる可能性があります。電気工事士資格の実技試験に向けた練習で産業機械の電気工作でも通用する緻密な知識と技能が習得できます。

また、産業機器資材のカタログや取扱説明書はまさに産業機械に特化した書籍です。メーカーの推奨する使用条件や配線例、制御プログラム例が記載されており、電気だけでなく、機械要素、制御に関する知識が同時に得られます。また、産業機械分野での技術公式や法令、規制の解説などが技術資料として巻末にまとめられている製品カタログも多くあり、もはや技術専門書のような分厚い製品カタログも少なくありません。特にメーカー勤務の若手技術者などは、製品カタログを技術専門書と思って目を通してみると、OJTだけでは得られない多くの発見が得られるはずです。

シーケンス設計

シーケンス制御は、対象を決められた順序通りに動かす制御方式を指します。家電の洗濯機で例えると、
「扉を閉める→スタートボタン→扉をロック→洗う→すすぐ→脱水→扉をアンロック→終了・ブザーを鳴らす」
の一連の動作を順番に進める制御を指します。この例の場合、

  1. 扉が閉まっていることを確認する「センサ、スイッチ」
  2. 扉をロックする、ブザーを鳴らす「コイル、自己保持回路」
  3. スタートボタンを有効にする「リレー、インターロック回路」
  4. 各工程の動作時間を設定する「タイマ」
  5. 各工程の繰り返し回数を設定する「カウンタ」
が主要な制御要素として挙げられます。これらの要素を組み合わせて任意の動作パターンや順序を組み上げるのがシーケンス設計です。

 

現代の産業機械は上記の制御要素を電子的に置き換えたPLCでの無接点回路による制御が主流ですが、大容量電力の切り替えや非常停止ボタンなどには、物理的なリレーやスイッチやなど有接点回路が組み込まれます。

PLC設計

PLCが産業機械の制御に用いられる理由として、「高信頼性、高耐久性、高速応答性、論理演算機能」が挙げられます。有接点制御機器の場合は物理的に制御回路を切り替えるため、機構的寿命や電気接点的寿命を考慮し、定期的に交換する必要があります。
一方で半導体によって電子的に回路を切り替えるPLCは上記のような有利な特徴を活かし、ラダー図(ラダー言語)と呼ばれるプログラミングで制御を行います。このラダー図はシーケンス回路図がベースとなっています。そのため、シーケンス回路を理解するのがPLC制御を習得するファーストステップと言えます。

シーケンス設計の勉強におすすめの本

基本を押さえるためには初心者向け参考書がおすすめです。また、シーケンス制御自体は成熟しきった技術であるため、どの参考書も内容的には大きく変わりません。したがって、発行が少々古いですが、おすすめしたいのが、『必携 シーケンス制御プログラム定石集』シリーズです。非常に実用的な制御事例によって構成されており、実際の業務にも役立つ書籍です。

メーカーのトレーニングスクールでさらにレベルアップ

次のステップとしておすすめしたいのが、メーカーのトレーニングスクールです。もし使用するPLCメーカーが決まっている場合には、そのメーカーの技術講習を受けるのがおすすめです。座学だけではなく、実習とセットになっているため、より実践的な知識が身につきます。また、最近ではeラーニングのコンテンツも充実しているようです。

例: 三菱電機 | FATECトレーニングスクール FA機器・配電制御機器関連
オムロン制御機器 | コースを選んで申し込む(FA実践セミナ)

手を動かして実践を積み重ねる

そして、何よりも重要なのは実践です。自分で手を動かしてアウトプットを作り出さなければ、技術は身に付きません。過去のリピートでなければ初版プログラムが問題なく動くことはまれなため、トラブルシューティング能力が設計者には必要です。先輩や上司にアドバイスを求めるにしても、何がわからないかわからない状態ではお互いのパフォーマンスを下げてしまいます。

制御設計は、機械設計や電気設計に比べ、作成した後の修正が比較的簡単なことです。そのため最初は小規模な制御からはじめ「自分でできた、できなかった」を積み重ね、実践していくことが重要です。そのうえで、先輩や上司にアドバイスを求めると、とても的確なアドバイスが得られるはずです。

プログラミング言語の勉強でさらなるステップアップ

最近では機械制御に対してIoTに対応したネットワーク化や、AIなどによる知能化、自律制御化が社会ニーズとして高まっています。これはSDGsの9番「産業と技術革新の基盤を作ろう」に該当します。産業機械が独立してひたすら同じ動きで個別最適を狙う工場から、機械がネットワークにつながり自律的に動き、人機協調して全体最適(生産性最大化)を狙う工場へと変革しようという世界的な動きがあるのです。
そのため、これからの産業機械の制御技術者は、ラダー言語以外のPCプログラミング言語やネットワークに対する知識も必須となります。実際に、PCプログラム処理機能を持つ制御機器も次々にリリースされています。

ラダー言語とPCプログラミング言語はそもそもの目的や思想が違うため、PLC技術者にとってPCプログラミング言語はとっつきづらい部分があります。しかしプログラミング教育が義務化された影響で、初心者向けのプログラミング解説書は以前にも増して豊富に出版されているため、まずは入門書と小規模制御の実践から始めてみることをおすすめします。

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