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制御盤の電気設計とは、どんなことをする?今後の課題は?

作成者: Admin|Dec 1, 2021 10:00:00 PM

電気設計と一口に言ってもさまざまな形態の電気設計があります。その中でも、機械の制御をコントロールする機器を搭載する制御盤を設計する電気設計は、機械の動作も把握する必要があるため、電気の知識だけでなく、機械に関する知識も必要となります。制御盤を設計する電気設計職とはどのような業務を行うのでしょうか。また、制御盤の電気設計が抱えている課題はどのようなものなのでしょうか。ここでは、制御盤の電気設計の基礎と課題を解説します。

もくじ

  1. 制御設計・電気設計とは?
  2. 時代に対応できる電気設計にするには


制御設計・電気設計とは?

まずは電気を使った機械を動かすための制御設計や制御盤設計とはどのようなものなのか説明します。 電気を使った工作機械や産業用機械などには、電力を供給する動力部と、どのような動作をするかを制御する頭脳となる制御部が必要となります。この二つは電気の知識が必要となる分野の設計領域です。
動力部の設計では機械の回転数や負荷率制御を行うために、インバータの設置を検討します。また、電磁開閉器の負荷容量検討など、動力がどの程度の大きさで、どれくらいの電源が必要なのかを検討します。 一方で制御部の設計では、機械を動かすためのシーケンス制御の検討などから行います。PLCを使用する場合は、制御規模の検討や外部信号での連動動作など、機械を円滑に動かすために必要な制御方法と制御機器の選定を行います。インバータの運転指令や周波数設定など動力部への指令も制御部から出るため、動力部の設計とセットで行うことが多いです。

また、機械が設置される工場などには、粉塵や湿気が多い環境に置かれて、制御盤がその近傍に置かれて操作されることもあります。その場合、制御盤の設置環境によって、制御盤筐体の耐環境性能の検討などを行うこともあります。内部に搭載する機器が湿気や腐食性ガスなどによって早期故障しないような構造とする必要がある場合、制御盤筐体の板金設計などにもかかわることがあります。

このように制御設計、電気設計は、さまざまなことを設計段階で検討する必要があるのです。

デジタル化の時代到来・電気設計は20年前とどう変わった?

デジタル化やDX、スマートファクトリーと呼ばれる工場業務の効率化を目的とした制御盤の更新や、手作業工程の機械化などがトレンドとなっています。これらの変化に伴い、機械を製造する側の電気設計はどのように変わったのでしょうか。20年ほど前の2000年と比較してみましょう。
2000年ごろは紙で書いていた手書き図面が、CADや図面作成ソフトでの作成に変化してきた時代になります。それまで図面のやり取りは郵送やFAXが主流でしたが、インターネットによる電子メールの普及で、電子送信でのやり取りに変わっていきました。

電気設計において、デジタル化という観点からは、実はこの20年前とほぼ変わっていません。図面のCAD化、電子メールによるやり取りに変わった以降、目立ったデジタル化による業務効率化が行われていないというのが現状です。設計検討においても、各設計者が昔ながらの方法で検討を行い、業務にあたっています。そのため、細かい部分の検討も行える仕事が早い人に業務が集中し、業務の標準化が行われていません。
今後、DXなどのテクノロジーを駆使して、電気設計業務の効率化も考える必要が出てくるでしょう。

変わらないもの:シンボルは旧JIS

電気設計の図面では、機械や土木などの図面と同様に、電気配線の記号を用いられて図面が作成されています。この図面が過去の図面から編集して作成することがほとんどのため、図面のシンボルが現在は使われていない旧JISの表記や、企業独自のシンボルなどが利用されていることが多いです。

変わらないもの:コピペ業務

設計検討を行っていくと、過去のBOMや図面をそのまま使えるのではと思える案件にあたることがあります。その場合、設計を行うというよりも、過去の図面や設計資料の件名や納入先を変えた形での資料作成を行うこともあるでしょう。とくに経験の浅い設計者がOJTも兼ねて行うこともあります。
しかし、こういったコピペの設計検討だけに忙殺されてしまっては、本来行うべき設計検討がないがしろになるというデメリットは留意しておくべきでしょう。

変わらないもの:CADソフトウェア

設計業務のCAD化が始まった2000年台から同じCADを使っているというような電気設計の部署も存在するほど、CADの使用に関してはバージョンアップされていないことが多いです。
CADは図面作成のみに行うソフトウェアという印象が強く、バージョンアップや新しいCADを導入するとなると、想定以上の費用がかかるためと考えられています。

現在、さまざまな用途に特化した使いやすいCADソフトウェアが販売されていますが、電気設計分野では、汎用CADの使用率が高く、普及率はそこまで高くありません。

時代に対応できる電気設計にするには

電気設計では、2000年代のデジタル化以降、多くの業務効率化の可能性を残しながら、あまりデジタルによる効率化が進んでいない、という現状を説明してきました。
では、時代に合った効率的でミスが少なく、設計者の技量による製品品質の差が出にくい設計とするためには、どのように効率化を行えばよいのでしょうか?

電気設計の標準化

電気設計を一から作り上げるという技量も確かに重要ではありますが、多くは先人たちの積み重ねてきた回路構成や検討結果が図面となって残っています。
こうした資料を標準化し、設計ブロックとすることで、どのような場合にどれを当てはめればいいかという単純な業務フローの作成は必要でしょう。つまり、経験の少ない設計者でもミスの少ない設計を行うことができるように、電気設計の標準化を進めるということです。

人口減少による人手不足の状態で、設計者が育つのに10年はかかるといわれています。しかし電気設計の標準化は、新卒や中途入社の人でも、早くから戦力として業務に当たれるような業務形態に変貌させる可能性があります。

設計手法の見直し:図面の書き方のルールなど

機械設計では、部分ごとにどのようなパターンの図面とBOMを適用すればよいのかを積み重ねて一台の機械を設計するモジュール設計が進んでいます。しかし、これまで述べてきたように、電気設計では事情が違います。まだまだ設計者任せの部分や、明文化されていないベテラン設計者の知見た技術が多いです。昔から使われている図面でも、それが今の書き方に合っているのかどうかさえ分からない、というようなものもあります。

今後はこれらを見直し、図面の書き方を最新JISや国際標準に合った書き方に変えることが大切です。そうすれば、外部業者や海外の設計会社などに設計業務の委託を行うような場合にも、スムーズに業務を委託することができるようになるでしょう。

パターン化された組み合わせ

設計をパターン化すると、設計案件の多くは、数多くあるパターンのうちのいくつかを組み合わせれば完成するということがわかります。
しかし、こうした設計パターンの組み合わせは、設計は思考業務で上流工程、自分で考えなければよい設計ができないという理念から敬遠されてきた経緯があります。

しかしこれからは、「設計も製造や営業などと同様、会社の中の一部門でしかない」と考え方を変えなければなりません。今は思考にかける時間が長くなれば労働時間も増え、人が集まらなくなってしまうような時代だからです。
設計パターンの組み合わせによる設計業務の効率化は、過去の設計案件の棚卸を行い、分類すればできる場合が多いです。まだ標準化が進んでいない企業は、なるべく早い段階で取り組むべき課題といえるでしょう。