電気部品では欠かせないワイヤーやケーブルなどの配線の長さ・配置を決める「ハーネス設計」。そんなハーネス設計の際、いまだに現場で測長するというアナログな作業を行っている企業も多いようです。しかし、そのままでは余剰部材や手戻りの発生という「無駄」が多くなりがちなのも事実。
2021年のEPLANバーチャルフェアでは約直径40㎝の機器内の配線について機械設計と電気設計のコミュニケーションをどう改善したのか、ユーザー事例が紹介されていました。 Siemens NX-EPLAN P8-EPLAN Harness proDのデータコミュニケーションの取り方、何が良かったのかどう作業しているのか、今回その内容も併せて紹介します。
* この記事は2018年10月16日にEPLAN Japan 公式ブログに掲載した記事を再編集、再掲載いたしました。
ハーネス設計において重要なことは、ピッタリの長さにすることです。ハーネスが短すぎて届かなければ接続できませんし、逆に長すぎて余ってしまうと邪魔になります。長すぎず短すぎない「ちょうど良い長さ」にできるのが理想的なのです。
しかしながら、ハーネスの長さをアナログ作業で測定している場合、この「ちょうど良い長さ」が正確に把握できません。ある程度の目星はつきますが、どうしてもあいまいになってしまうのです。このような場合、ほとんどは大きい値を選ぶことになるでしょう。「長さが足りなくなる」ということが致命的だからです。余るならまだ良い方ですが、届かなければ作り直しになります。そのため「少し長めに作ることが多い」といえるでしょう。
リスクを避けるためなので仕方ありませんが、適度な長さに比べて余剰分が無駄になってしまうことは事実です。また、余ったハーネスはその分場所を取ることになるため、余分なスペースを割かなければいけません。この問題を解決するには、「ちょうど良い長さ」が分かるようにする必要があります。
ケーブル設計やハーネス(ケーブルを束ねたもの)設計において手戻りが多いのが現状です。その理由として、ケーブル設計には「電気設計」と「機械設計」の両方の情報が必要なことが挙げられます。どちらかに変更が生じればケーブル設計の方にも影響が出るため、結果的に不具合が発生しやすいのです。
アナログ作業で測長したハーネスの長さを、またやり直す手間とコストがかかります。手戻りが発生した場合、フォローに回っているベテランのエンジニアほど作業単価が高いので、貴重な人材を無駄遣いしていると言っても過言ではありません。もし万が一、と余分に長さを取っておいたとしても、使わなかった場合は場所を取るだけです。どちらにしても、大きな無駄を発生させていることに変わりありません。
「ちょうど良い長さ」が分かるようにするために「試作品」を作成する方法はどうでしょうか。ただ、当然ながら試作品の作成には費用がかかります。従って、設計変更のたびに試作品を作ることは合理的ではありません。
それではどうすればいいのでしょうか。その答えは「機械設計と電気設計を連携させて3Dで設計をする」です。機械設計は3DCADを使うことが一般的ですが、電気CADではいまだに2Dもしくは、回路図がデータを持たない「回路図を書く」CADが広く利用されています。
電気設計も3Dで設計することで、機械設計の3Dデータを連携させます。すると物理的なプロトタイプ代わりにデジタルツインを作成することで、変更があった場合でも迅速に対応と実装が可能になります。
このユーザー事例を紹介しているバーチャルフェアの日本語レポートは公開中ですのでよかったらこちらのPDFをご活用ください。
2021年EPLANバーチャルフェアでCadCabel社の基調講演がありました。世界最大のニュートリノ観測所でニュートリノを識別するためにアイスキューブ内に5160個のデジタル光学モジュールを設置し、デジタル光学モジュール(MDOM)を南極の深さ2450メートルまで降ろすというプロジェクトのケーブル配線に同社はかかわっていました。
国は違えどエンジニアの抱える課題は同じで、下記のような課題を抱えていました。
バーチャル・プロトタイプ上に配線することで、事前にスペースの問題を解消し、全従業員が配線を確認できる、機械設計者とも共有ようになりました。さらに詳細な設計を行うので事前にケーブルの長さがわかり、アセンブリの正確な予測が可能になりました。テクニカルドキュメントが改善したので、製造部門とのコミュニケーションが向上したとセミナーで解説していました。
3D機械設計データを3D電気設計で使用することにより、実物とほぼ同じ3Dモデルが画面上で確認できます。もちろんそこに取り付けられるハーネスの長さも、実物にかなり近いレベルで把握できます。つまり、適切な長さの設計が行えるということです。
電気設計を3Dで行うハーネス設計の効率化で得られるメリットはケーブル・ハーネスの詳細な測長だけではありません。デジタルツイン上で配線することで、事前にスペースの問題を解消できます。全従業員が配線を確認でき、詳細なFrom-Toを記載したドキュメントが作成できます。それを見ればどの作業者でも同じ配線作業が可能です。データは機械設計者とも共有し、コミュニケーションが向上します。アセンブリの正確な予測が可能になります。
EPLANプラットフォームのデータベースから配線リストをインポートし、ハーネスケーブルのBOMや2D ネイルボード図面自動で生成します。エンジニアリングプロセス中に、デジタルツインに関する電気設計情報を付加することができ、ケーブルやハーネスの設計は、試作品の有無に左右されません。
このソフトウェアはMCADシステムに対してオープンであるため、既存のシステムランドスケープにシームレスに統合することが可能です。
参考: