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電気設計の標準化をどう進めるか - 機能ベースのエンジニアリングとIEC規格 - 世界標準の総合電気設計CAD Eplanブログ

作成者: Admin|Mar 13, 2026 2:05:00 AM

 Eplan Japan公式YouTubeで公開中の「 【字幕】Eplanと国際規格‐Eplanは標準化をどのようにサポートするのか 」の内容を、記事としてまとめました。 

今回のテーマは標準化

電気設計の現場では、「お客様ごとに仕様が違うから標準化は難しい」と考えられがちです。
しかし、設備の複雑化、人材不足、保守対応の高度化が進む中で、設計・製造・保守をまたいで情報を整理し、共通ルールで扱える状態をつくることの重要性はますます高まっています。

Eplan Spotlight動画では、この標準化を単なるルール統一ではなく、産業オートメーション全体の協業を支えるための基盤として捉えています。

本記事では動画のポイントをもとに、標準化が求められる理由、個別設計でも標準化できる考え方、そしてその実践につながる機能別設計とEplanの活用法を整理します。

YouTubeでは細かくチャプター分けをしているので、併せてご活用ください。

01:45 そもそもなぜ標準化が必要なのか 

標準化は昔から語られてきたテーマでありながら、今なお多くの企業にとって課題であり続けています。

その理由は、標準化が単なる図面ルールの話ではなく、産業オートメーション全体のエコシステムに関わるテーマだからです。

たとえば、機械装置メーカーやシステムサプライヤーにとっては、設計効率や再利用性の向上が重要です。一方、設備オペレーターにとっては、保守・メンテナンスのしやすさ、紙に頼らないデジタルメンテナンス、サプライヤーとの円滑な情報共有が重要になります。

つまり標準化とは、関係者が共通の言語を持ち、できるだけスムーズに協業するための土台だといえます。

オペレーターと装置メーカーでは、標準化の意味が少し違う

動画では、標準化の必要性を「誰の視点で見るか」で整理していました。


設備オペレーターの立場では、対象は1台の機械ではなく工場全体です。
安全性を確保し、生産性を維持し、故障や修理の影響を最小限に抑えるには、工場内で使う技術やドキュメントの考え方ができるだけ揃っている方が有利です。HMIやPLCの考え方が機械ごとにばらばらだと、現場エンジニアの負担は大きくなります。

一方で、装置メーカーやサブコントラクターにとって重要なのは効率です。
標準化された設計思想や設計ルールがあれば、ある案件で使った設計資産を次の案件に再利用しやすくなります。また、複数のエンジニアが関わっても、同じ品質の成果物を出しやすくなります。

このように、オペレーターにとっての標準化は「運用しやすさ」
装置メーカーにとっての標準化は「再利用しやすさ・作りやすさ」と言い換えることができます。

06:10 「うちは個別対応だから標準化できない?」機械の違いではなく「機能」で考える

展示会やEplan導入相談の場でよく返ってくるのが、「当社の装置はお客様ごとに違うので標準化は無理です」という反応です。

確かに、機械の見た目や構造は案件ごとに大きく異なります。ですが、電気設計の観点で見ると、構成要素は意外なほど共通しています。どの機械にも、電源、PLC、センサー、アクチュエータ、モーターなどがあり、違うのは主に容量、数量、選定部品の詳細です。

つまり、機械の物理的な違いに引っ張られると標準化は難しく見えますが、機能に着目すると共通化できる部分が見えてきます。

ここで重要になるのが、動画でも中心テーマとして語られていた機能ベースのエンジニアリングです。

07:14 機械の違いではなく「機能」で考えるという発想転換

多くの企業が「自社の機械は一品一様なので標準化できない」と考えています。確かに、機械の構造やレイアウトは案件ごとに大きく異なります。

しかしどの機械にも

・電源
・PLC
・センサー
・アクチュエータ
・モーター

といった基本要素が存在します。
違いが出るのは、モーター容量やセンサー数などのパラメータの部分です。

このように機械の構造ではなく「機能」という視点で見ると、共通化できる部分が見えてきます
この考え方を設計手法として整理したものが、機能ベースのエンジニアリングです。

機能ベースのエンジニアリング とは、電気回路図を部品単位やハードウェア配置単位ではなく、機能単位で整理する設計手法です。

従来の生産指向型エンジニアリングでは、たとえばPLC入力カードを1ページ、出力カードを次ページといった形で図面が構成されることが一般的です。この方法は製造や実装の観点では理解しやすい一方で、ある機能に関係する情報を追うには複数ページを行き来する必要があります。

一方、機能ベースのエンジニアリング では、たとえばモーター駆動であれば、その機能に必要な入力信号、出力信号、保護機器、接続要素などを1つの機能ブロックの中にまとめて整理します。

 

  従来の生産指向型エンジニアリング 機能ベースのエンジニアリング
グループ化 部品タイプや物理配置ごと 機能ごと
構造 分散(複数ページに分かれる) 統合(1〜数ページにまとまる)
設計変更 複数ページの修正が必要で時間がかかる 多くの場合1ページで修正可能
協業 全体像が見えにくく協業しにくい 構造が明確で協業しやすい
エラー削減 複雑さによりミスが起きやすい 機能構造によりミスを減らせる

 

このように機能単位で設計を整理することで、設計変更への対応や情報共有が容易になり、標準化された設計資産として再利用することも可能になります。

08:44 国際規格が後押しする機能ベースのエンジニアリング(IEC準拠の重要性)

機能ベースのエンジニアリングを実際の設計プロセスの中で実現するうえで、重要な役割を果たしているのが国際規格です。

動画でも紹介されていたIEC 81346 は、対象を「何をするのか(機能)」「どこにあるのか(場所)」「何で構成されているのか(製品)」という複数の側面から構造化する考え方を定義しています。これにより、設備やシステムを単なるハードウェアの集合としてではなく、機能構造を持つシステムとして整理することが可能になります。

【資料公開中】規格の企画「IEC・新JISに対応した 電気設計の標準化をするために 知っておくべき概念」より抜粋

さらにIEC 61355は、プロジェクト内のドキュメント構造を整理するための規格です。電気回路図、ケーブル図、部品表などの各種ドキュメントを体系的に分類することで、プロジェクト全体の情報を整理しやすくなります。これらの規格は、機能ベースのエンジニアリングを実践するための共通基盤として、標準化を後押ししています。

 【資料公開中】規格の企画「IEC・新JISに対応した 電気設計の標準化をするために 知っておくべき概念」より抜粋 

16:00 生産指向ドキュメンテーションを支持する意見は今でも有効?

従来の生産指向型エンジニアリングには、製造現場にとって理解しやすいという利点があります。しかしその一方で、特定の機能に関する情報を探すためには複数の図面を行き来する必要があり、保守やトラブル対応の場面では必ずしも効率的とは言えませんでした。

機能ベースのエンジニアリングでは、まず機能単位で設計情報を整理し、その情報をもとに製造に必要な帳票やリストを生成します。つまり、設計データを中心に据え、そこから配線情報や部品表などの「製造向けビュー」を生成するという考え方です。

このアプローチにより、設計者は機能単位で設計を進めることができ、製造現場には必要な情報が整理された形で提供されます。また、保守担当者にとっても、トラブル対応時に必要な情報を機能単位で把握できるため、メンテナンス性の向上にもつながります。

18:26 3つレベルで標準化について考える|サプライヤーガイドライン 

動画では、標準化を実際に進める際の考え方として、3つのレベルが紹介されていました。

最も基本的なレベルは、システムレベルです。
ここでは、どのソフトウェアやフォーマットでドキュメントを作成し、どの形式で納品するのかといった基本条件を定義します。たとえば、Eplan形式でプロジェクトデータを納品する、といったルールです。

次のレベルは、レイアウトガイドラインです。
ここでは、プロジェクト構造やデバイス命名規則、使用する図記号など、ドキュメントの構造や見え方を統一します。

さらに進んだレベルが、設計ガイドラインです。
ここでは、使用する部品の範囲や設計ルールまで含めて標準化を進めます。オペレーター側が承認済み部品を定義し、サプライヤーがそれに基づいて設計を行うことで、保守性や予備品管理の面でもメリットが生まれます。

このように、標準化は一度にすべてを統一するものではなく、段階的に進めていくことができます。

22:25 Eplanのコラボレーションやデータ共有をサポートする仕組み‐クラウド活用 

こうした標準化の取り組みを実践するために、Eplanはさまざまな仕組みを提供しています。

たとえばEplan Engineering Standardでは、業界別のベストプラクティスやテンプレートプロジェクト、各種規格に対応したサンプルデータを利用することができます。これにより、標準化をゼロから構築するのではなく、実績あるテンプレートをベースに取り組みを始めることが可能になります。

また、クラウドサービスを活用することで、オペレーターとサプライヤーの間で設計データや標準ルールを共有することもできます。たとえばEplan eManageはプロジェクトデータの共有を支援し、eViewを使えばライセンスを持たない関係者でもオンラインで図面を確認し、コメントを付けることができます。

さらに、eStockを利用すれば、承認済み部品のリストをクラウド上で共有し、サプライヤーが同じ部品ライブラリを利用して設計を進めることができます。

こうした仕組みによって、標準化された設計環境をサプライチェーン全体で共有することが可能になります。

まとめ

産業オートメーションの分野では、設備の複雑化や人材不足を背景に、設計情報の標準化がますます重要になっています。動画で紹介された機能ベースのエンジニアリングは、ハードウェア構成ではなく機能を中心に設計を整理することで、設計・製造・保守の各工程で情報を活用しやすくするアプローチです。

IEC 81346やIEC 61355といった国際規格は、この考え方を支える基盤となっています。機能という視点で設計を整理することで、個別設計が多い現場でも、再利用可能な設計資産を構築することが可能になります。

Eplanは、こうした機能ベースのエンジニアリングを実践するために、規格に基づく構造化や設計データの再利用、クラウドによるデータ共有などを通じて、標準化されたエンジニアリング環境の構築を支援しています。

公開日:2026.03.12