EplanとSiemensは、顧客に実際の価値をもたらすソリューションの統合を進めることで、両社の協力関係をさらに強化しています。その取り組みの一つが、人工知能(AI)の活用です。
代表的な例が、Eplan Electric P8とSiemensのTIA Portalを連携させる仕組みです。この連携では、EplanがSiemensのシステムアーキテクチャ内にエージェントを提供し、AIがその基盤の上で動作することで、エンジニアリングの自動化と効率化をさらに高めることを目指しています。
Eplanは40年以上にわたり、電気設計および制御盤設計のソフトウェア分野をリードしてきました。業界の標準化や自動化を推進するとともに、パートナー企業との協力によって統合ソリューションの開発を加速しています。
EplanはSiemensのエンジニアリングエコシステムの重要な構成要素の一つでもあり、ここ数年、両社は複数のシステムをシームレスに統合する取り組みを進めてきました。例えば、SiemensのPLMソフトウェア「Teamcenter® X 」やSiemens' TIA Selection Tool configurator とEplan Platformを連携させることで、システム間でエンジニアリング情報を共有できるようにしています。
これにより、一度入力または生成された情報やデータは電子的に自動共有され、異なる分野間の協業を大幅に効率化できます。
Eplanは、他のシステムやツールと接続するためのスマートなインターフェースを構築することで、電気設計のワークフローを高速化し、プロセス全体で発生するエラーの削減にも貢献しています。特に設計変更が複数の分野に影響する場合、この仕組みは大きな効果を発揮します。
そして現在、Eplanは従来のシステム連携だけでなく、企業をまたぐプロセスの中でAIがどのようにタスクを担えるのかについても検討を進めています。
EplanのHead of Research & PrototypingであるJulian Rahmは、Siemensとの最近の共同プロジェクトについて次のように説明します。
「昨年、Siemensからあるプロジェクトに参加しないかと声をかけられました。目的は、TIA PortalとEplan Electric P8の間でデータ交換を改善するエージェントシステムを開発することでした。もっとも、それはあくまで出発点に過ぎませんでした。」
EplanにおけるAI研究の取り組みは2018年にさかのぼります。この年、Artificial Intelligence and Data Analytics(AIDA)部門が設立されました。このチームでは、データ分析や機械学習、AIモデルの活用方法などを研究し、オートメーション技術向けのエンジニアリングソリューションへの応用を検討してきました。
目標は、電気設計者に持続可能で実用的なAIソリューションを提供することです。その際に重視されているのは、AIによる効率化と同時に、エンジニアにとって重要な創造性や専門知識、問題解決能力を損なわないことです。こうした技術の開発には、高度な専門知識と顧客の業務環境に対する深い理解が不可欠です。
それでもEplanは、エンジニアリングにおけるAIの将来を見据えた取り組みを続けています。
CEOのセバスチャン・ザイツは、パネルディスカッションなどで次のように語っています。
「長期的には、反復的な作業を自動化することが目標です。そのためには、高品質なデータが不可欠です。」
Eplan CEO Sebastian Seitz 氏(右)と、CEO of Factory Automation at Siemens Rainer Brehm氏(中央)
EplanとSiemensは現在、産業用AIエージェントを活用して電気設計とオートメーション技術を統合するソリューションを共同で開発しています。その中心となるのが、複数のAIエージェントで構成されるシステムです。
この共同プロジェクトの目的は、電気設計(Eplan)とオートメーション設計(TIA Portal)の間で、プロジェクト更新や情報の同期を自動化することです。これにより、異なる分野のチームがより効率的に連携できるようになります。
Siemensは産業ソフトウェア統合の豊富な経験を持ち、複雑なエンジニアリングワークフローの実装を得意としています。このプロジェクトでは、EplanのRahmをはじめとするエンジニアがSiemensの専門家と協力し、デモプラントを用いたユースケースを共同で開発しました。
実証実験では、次のようなシナリオが想定されています。
SiemensのTIA Portalユーザーが、PLMシステムの監視エージェントから通知を受け取ります。そこには、例えばSiemensのモータ保護スイッチなどの電気部品に新しいバージョンがあるという情報が表示されます。
ユーザーが更新を承認すると、Siemens Engineering Copilot TIAが「オーケストレーターエージェント」と呼ばれるAIに接続します。このオーケストレーターは、システム内の複数のエージェントを統括し、必要な処理を調整する役割を担います。
その結果、Eplanの回路図と中板レイアウトが自動的に更新されます。
Rahmはこの仕組みについて次のように説明します。
「設計者は手作業で部品を置き換える必要がなくなります。
『Copilot、この部品をAからBに変更して』と指示するだけです。エージェントが関連するシステムを確認し、Eplanデータを見つけて更新するかどうかを確認します。」
回路図が更新されると同時に、TIA Portal側の設計データも自動的に更新されます。オーケストレーターエージェントがプロセス全体を監視するため、情報が失われたり更新手順が抜け落ちたりすることはありません。
このユースケース自体は複雑なものではありません。しかし、実際の現場では非常に時間がかかる作業の一例です。
「私たちは、Eplan側とSiemens側で何が必要なのか、どのようなデータを交換すべきかを詳細に検討しました。」Rahm氏
Eplanの強みは、Asset Administration Shell(AAS)にも利用されているデータ構造にあります。この仕組みによって、各コンポーネントを明確に識別することができます。
システム同士が連携する際には、どの情報がどの部品に対応しているのかを正確に識別できることが重要です。AASのコンセプトはまさにそのためのものです。
こうしたデータ基盤の上にAIが構築され、ユーザーの指示を具体的な設計変更へと変換します。
今回構築されたTIA PortalとEplanの連携は、今後のプロジェクトのモデルケースとなる可能性があります。ただし、現在のシステムはまだプロトタイプ段階です。自動車業界でいうコンセプトカーのような存在であり、実用化の時期はまだ決まっていません。
実際の導入には、さらなるテストや安全対策が必要になります。
Eplanは常に顧客ニーズを中心に考えており、使いやすく高度なエンジニアリング環境を提供することを目指しています。AIの導入によって、この基本方針が変わることはありません。
Siemensとの協力により、既存のAI技術や業界標準を活用できるため、研究段階から実用的なソリューションへと発展させる道筋が見えてきました。
Eplanのビジョンは、Siemensが「Advanced Machine Engineering」と呼ぶ概念とも一致しています。これは、見積もり段階からサービスまで、データが途切れることなく流れるエンジニアリング環境をAIによって支えるという考え方です。
本記事はEplan UKブログの記事を和訳しました。
Eplan provides agents and data for Siemens' AI system
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