
新JIS規格に準拠した回路記号で行う電気設計
2020/03/23
トレンド
世界の製造業では、設計の標準化という大きな流れが起こっています。しかし、日本ではあまり設計の標準化は進んでいません。日本の企業は「自社に合わせてカスタマイズされた製品」を好むからです。日本ではなぜ標準化よりカスタマイズが好まれるのでしょうか。
設計の標準化とはどういうものなのでしょうか。
2018年現在、世界的に「設計の標準化」が進んでいます。従来の複雑にカスタマイズした設計では、設計にも製造にも手間とコストがかかり、別の製品に流用しにくいというデメリットがあります。しかし設計を標準化すればそれらのデメリットを解決できるうえ、メリットもあります。そのため設計は世界的に標準化の方向に進んでいるのです。
「標準化」の前に「共通化」が盛んにうたわれていましたが、共通化と標準化は異なります。
共通化とは、部品やユニットおよびその設計図にできるだけ共通のものを使い、多くの製品に流用することです。既製品のブロックを組み立てるような設計であり、設計や製造にかかる時間やコストを削減できます。ただし、共通化できるのは過去に製作したことのある部品やユニットだけです。
標準化とは、部品やユニットの標準化ではなく、「設計の標準化」をさします。最初に製品体系を整理し、部品やユニットごとに標準的な仕様を明確に定義します。仕様はあくまで標準値であり、限界値ではありません。そこから標準図面を作成し公開します。上述の共通化でいう「ブロック」そのものを設計することに相当します。標準図面をもとにすれば、これまで製作したことのない部品やユニットでも製作可能です。
標準化には以下のメリットとデメリットがあります。
メリット
デメリット
標準化の流れがわかっていても、自社向けにはカスタマイズを好む顧客が多いものです。
設計を標準化すると自社のやり方を合わせていく必要がありますが、カスタマイズすればその必要がないため、顧客にとっては非常に楽です。
標準化された部品や工程でつくると、出来上がる製品も標準的になってしまい、他社との差別化ができない、カスタマイズしたほうが独自性のある製品がつくれる、というイメージを持つ顧客も多く存在します。
これらの理由から、一般論としては標準化のメリットを認めていても、自社の標準化導入には反対する顧客が多いのです。
カスタマイズにもメリットとデメリットがあります。
メリット
デメリット
米国、ドイツ、フランスなど、他国は戦略的に標準化を推し進めています。標準化が効率的に利益を最大化できる手段だからです。
標準化すれば、設計や製造のコストや時間が抑えられ、品質が安定します。標準化された仕様を利用することで他製品との組み合わせも自在になるので、拡張性が上がり、さまざまな応用が可能です。それによって、企業としての競争力が上がります。
標準仕様のうえで設計しても、製品を差別化することは可能です。標準化された図面は1通りではなく、設計のパラメーターを変化させたシリーズになります。このシリーズの組み合わせでバリエーションをつくり出し、より顧客の要望を実現するような機能や性能を実現した魅力的な製品を設計することが可能です。
標準化された仕様に関係のない部分は、設計者が自由に決めることもできます。
ドイツでは、国策として設計の標準化を推進中です。企業規模の大小を問わずに「インダストリー4.0」をうたい、世界レベルでの標準化を進めています。開発から生産、供給までを標準化し、標準化された仕様や図面は、多くの企業で使用可能です。この標準化プロセスはEUをはじめ他国へも輸出され、ドイツの製造プロセスを「世界標準」にしようという流れになっています。
日本の製造業がグローバルな市場で戦うためには、標準化は必須です。これまでの「多く使われているものを標準とする」方法では海外市場で競争できません。設計のルールを標準化して個別設計に発展させる方法を取り入れることで、海外市場でも競争力を維持できるのです。
参考: