機械系、電気系それぞれのCADについて、国内のシェアと普及率から2D-CADと3D-CADを比較します。電気CADに比べて機械CADでは3D-CADの普及が進んでいます。機械設計で2Dはどのような分野で使われ続け、3Dを使うのはどのような企業なのでしょうか。電気設計の3D普及率はどのぐらいでしょうか。過去の調査と比較して、数年でCADがどのように普及したか探ります。
エンジニアのためのキャリア応援マガジン『fabcross for エンジニア』は、2020年と2016年に「仕事で利用するツール/システム」についてアンケート調査を行いました。2016年と2020年の結果を比較すると、機械CADでは2D-CAD・3D-CADの導入が進んでいました。
引用:エンジニアのためのキャリア応援マガジン「fabcross for エンジニア」調べ
企業規模別に集計したところ、従業員数が100人以下の企業は2D-CADの導入率が高いことが分かりました。2D-CADが70%、3D-CADが55%となっています。2016年の調査と比較すると2D-CADの導入は+0.9%、3D-CADの導入は+9.6%。3D-CADの導入が4年間で進んだことがわかります。
従業員数1-100名の調査結果抜粋(調査データは下記参考にリンク)
機械CAD | 2016年 | 2020年 |
2D-CAD | 69.1% | 70.0% |
3D-CAD | 45.4% | 55.0% |
規模別で見たとき、101~300人規模を超える企業から2DCADに比べて3D-CADの導入率が高くなります。また、従業員1万人以上の企業では、3D-CADの導入、71.8%まで上がります。(2DCADは42.7%)
また2020年 業種別の集計では、機械系の企業の69.6%が2D-CADを使用しています。電気機器では53.1%が2DCADを使用しています。機械系企業での3D-CAD導入率は65.2%、電気機器系企業では77.8%。2016年の調査より増加しているので、導入が進んでいることがわかります。
従業員1万人以上の企業の調査結果抜粋(調査データは下記参考にリンク)
機械CAD | 2016年 | 2020年 |
3D-CAD | 74.1% | 71.8% |
機械系企業の調査結果抜粋(調査データは下記参考にリンク)
機械CAD | 2016年 | 2020年 |
2D-CAD | 63.3% | 69.6% |
3D-CAD | 65.0% | 65.2% |
電気機器系企業の調査結果抜粋(調査データは下記参考にリンク)
機械CAD | 2016年 | 2020年 |
2D-CAD | 50.6% | 53.1% |
3D-CAD | 74.1% | 77.8% |
次に使っているツールを具体的に見てみましょう。
2D-CADを導入していると答えた企業のうち、具体的なツール名として得られた回答は330件でした。(2020年調査)この中でAutoCAD LTを使っているという回答が188件と最も多い結果になりました。これは2016年の結果と同じでした。次いで多いのがJw-cadで72件となっており、2D-CADの中ではAutoCADが群を抜いて多いことがわかります。
3D-CADでは299件中、AutoCADが136件と2位のSOLIDWORKS(69件)を大きく離した結果となりました。(2020年調査)
2016年では回答数218件中CATIAが69件、SOLIDWORKSが47件、PTC Creo Parametricが37件となっており、各CADソフトの訴求力が拮抗していました。3D-CADソフトウェア導入状況は4年間でずいぶん変わるなという印象です。
それでは電気設計CADについてはどうでしょう。
製造業向け情報サイトTech Factoryでは、2019年に「電気設計者の課題に関するアンケート調査」を行いました。同じ調査は2017年にも行われていますのでこちらを比較します。
2019年の調査では回答数159件のうち、62.9%はすでに電気CADを導入していると答えています。2017年の調査では70.4%が電気CADを導入していると回答していたので、国内の電気設計CAD普及率は大体63%~70%であると推察できます。
また、この回答者の中で実際に使っているツール名を聞いたところ、2019年の調査ではAutoCAD ElectricalやOrCADといった名前が上位に挙がりました。2017年の調査結果とはずいぶん様変わりしていたので、この回答は市場のシェアとイコールではないと理解します。また、アンケート結果に上がっているCADがPCB回路設計や基板設計など、様々な業種向けのソフトウェアが混在している点は注意しなければいけません。
2019年調査 導入済みツールの名称一部抜粋(調査データは下記参考にリンク)
電気CAD | 2019年 |
AutoCAD Electrical | 26.4% |
OrCAD | 22.6% |
CR5000/8000 | 21.4% |
EPLAN | 1.9% |
その他 | 35.2% |
またこのアンケートでは、電気設計の課題を解決するにあたり、ツールの新規導入が効果的かと思うかも聞いています。ツールの新規導入は効果的ではないと回答した人(28.1%)にその理由を聞いたところこのような結果になりました。
ツールの新規導入は効果的ではないと回答した人(28.1%)の理由
これらのことから推測するに、何か設計に関する課題を抱えていても、どうしたら設計業務改善につながるのか検討する時間、新しいツールを試してみるコストや時間の余裕がない技術者も一定数いそうです。そのような人は、3D-CADの機能性に触れることなく2D-CADを使い続けているのではないかと予想されます。
2019年のアンケート結果を占めるのはほぼ2D-CADであり、国内の電気設計ではまだ3D-CADの普及が進んでいないことがうかがえます。
EPLANが日々お話ししているような、電気設計・制御設計者はすでに電気CADを使用していますが、業務内容(電気設計・制御設計)に特化したものを使用している人はまだ少数派です。お客様に聞くと導入しているCADの大半は「回路図」を絵として描き、2Dのレイアウト図も手作業で描いていると聞きます。
EPLANは2016年頃から電気設計の3D化の効果を訴えてきました。最近になってやっと、お客様からも電気設計も3D化するとよさそう、3Dでレイアウト設計について興味があるなどの声を聴くようになってきました。
機械CADが手書きから2D-CAD、3D-CADと導入されてきたように、電気CADも今2Dから3Dに移る時期が必ず来ます。そして今がその過渡期です。電気3D-CAD導入のためには、設計内容に特化したCADを入れる必要があります。PCB回路設計ではPCB回路設計に特化したCADで。制御盤の回路設計は、制御盤の電気設計に特化した電気設計CADで。そうすることがスムーズな3D-CAD導入につながります。
3D-CADを実際に使っている技術者は、どのような点にメリットを感じているのでしょうか。3D-CADの導入が進んでいる機械設計者のアンケートを再び見てみます。(fabcross for エンジニアによる、「仕事で利用するツール/システム」に関するアンケート調査) 3D-CADを導入してみて感じたメリットとして、次のような回答がありました。(アンケート結果を引用)
***
メリット
一方デメリットは次のような回答となっています。
デメリット
***
これらの意見から、今まで2D-CADで設計をしてきた職人気質の層が、3D-CADにデメリットを感じていると予想されます。
実際に「2D設計や今の設計手法で何とかなっているものを3Dにするのは…」というお客様のお声をEPLANにいただくこともあります。
電気設計(特に制御盤の設計)の現状は、「2D設計や今の設計手法で書いたものを(外部の協力会社が何とか読み取ってくれ製造してくれる)ものを3Dにする」というのが多くの現状です。外部の協力会社が何とか読み取ってくれ製造してくれる、という点をどうとらえるのかによって2D-CADでいいのか3D-CADがいいのかが分かれるのではないでしょうか。
2019年のアンケート結果では、電気設計3D CADの普及率は低い現状でした。2024年の今はどうなっているでしょうか。
第3者のアンケートなどは見つけられなかったのですが、日々Eplanがお客様と接する中で、電気設計専用CAD、電気設計の3D化の要求は高まっていると感じます。
2020年でパンデミックを経験し、従来のやり方の課題のが浮き彫りになり、効率化や自動化といった新しい技術や手法の対応の必要性を感じた、機械設計の3D対応が進んだことにより、電気設計の3D化対応の必要性が出たというきっかけもあるでしょう。
電気設計の3Dだけでなく、電気設計に特化した専用電気CADの導入を検討する企業も増えています。人手不足で業務のやり方を変えなければいけない、取引先がEplanを使用していて気になって問い合わせました、というお話もありました。
電気設計は今後、アナログな手法からデジタル化された電気設計へ、そして3D化へと導入が進んでいくと思います。機械CADが3D-CADを主流としている傾向から、電気CADでも同様に今後3Dが主流化することは明白です。
2024年6月28日まで限定で、電気設計CAD見直しセミナーを配信中です。
この機会にぜひご覧ください。
公開日:2021年3月30日
最終更新日:2024年5月20日
参考: