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2024/04/02
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電気設計CADの導入は電気設計業界をどう変えたのでしょうか。また、海外で電気設計CADはどのように進化し、日本の電気設計業界はどのような問題を抱えているのでしょうか。電気設計を標準化するためのソリューションとして、国内でも普及が進む電気設計CADについて、その概要と活用についての課題を解説します。
* この記事は2018年1月25日にEPLAN Japan 公式ブログに掲載した記事を再編集、再掲載いたしました。
電気設計CADは電気設計に特化したCADで、従来の手作業に比べ大幅な効率化を図ることができるツールとして普及が進んでいます。電気設計CADを使うことによって、手作業による作図に比べより正確で整った図面を作成することができます。さらに、シンボルを選択するだけで配置することができることから、作図にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。
手作業や機械CADによる図面では、ひとつの図面を修正した際に関連する図面を個別に修正しなければいけません。一方で、電気設計CADでは図面間で情報が連動、修正点がリアルタイムに関連図面へと反映され、不整合を防止する機能を備えているので、一部図面の修正忘れによる手戻り防止という点も大きなメリットもあります。
日本でも導入率はすでに70%を超えた電気設計CAD。ですがその進化の歴史、アプローチの仕方は日本と海外でまったく異なっています。まずは、日本と海外において電気設計CADはどのような道を歩んできたのかご紹介します。
日本国内の電気設計分野において、CADは主に図面を「描くためのツール」として普及してきました。これは日本のものづくりにおいて現場第一主義という意識が強く、設計エンジニアの発言力が強かったことが一因として考えられます。また、日本製品の競争力が強かったため全体の効率改革という考えには結びつきにくく、効率化を図るとしても各部門個別での取り組みとなりがちでした。 これらの背景から、国内において電気設計CADは作図ツールとしてのみ発展したと考えられます。
一方海外においては、電気設計CADは異なる方向から進化を遂げました。 世界でトップシェアを持つEPLANの電気設計CADを例に挙げてみます。EPLANの電気設計CADはきれいに整った図面を描くだけのものではありません。設計した図面データを統合されたデータベースで管理し、そのデータから関連図面を自動で作図、さらに設計情報を3次元で捉え、制御盤内のレイアウト設計まで行います。また、データベースに格納された情報から、設計だけにとどまらず各種帳票類など、別の部門、工程で活用できるアウトプットが可能です。
このように海外の電気設計CADがアドバンテージを持った背景には2つの要因があります。 ひとつは電気設計CADが機械設計CADと同様の進化を遂げた歴史があることです。機械設計分野は、電気設計分野よりひと足先にコンピューターならではの性能を生かしたCADにたどり着いており、海外では電気設計CADも同様の進化をたどりました。
もうひとつは、欧米企業の特色としてトップダウン方式が主流ということがあります。トップが総合的な効率を考え電気設計CADを導入したことから、海外の電気設計CADは総合的な管理ができるツールへと、さらなる進化を遂げていったと考えられます。
前述のように、日本の電気設計業界では、海外に比べて電気設計CADの活用が進んでいるとはいえません。さらにまだ課題はあります。
CADはもともと機械設計、メカ系技術者が使うものでした。よってメカ系技術者がCADを使う際、どうしてもスペースや形状などの面から設計検討を進めることになります。しかし電気設計、エレ系技術者が求めるのは回路シミュレーターであり、回路図は形状と無関係であることが多くあり、電気的な特性と条件を決定するものであった。こうした意識の違いが、2010年代前半まで日本国内には根強く残っていました。
一方海外では、前述の通りメカとエレ双方において、CADが同様の進化を遂げたことにより意識の差が少なく、エレ・メカ連携という観点からも一歩リードしているのが実状です。
TechFactoryが2019年に行った「電気設計者の課題に関するアンケート調査」によると、国内において電気設計CADを導入している企業は70%前後で、普及が進んでいることがわかります。
しかし、その内部にはまだ課題が残されているようです。設計課題解決への取り組みとして、2017年の調査時においては「有効なツールの活用」が必要と考える回答者が約46%と約半数に達しました。さらに「ツールの新規導入(入れ替え)は効果的か」という問いに対して約73%が「はい」と答えています。この結果から、電気設計CADをツールとして有効活用できていないという問題点があることも浮き彫りになりました。
2019年の調査でのアンケート結果を占めるのはほぼ2D CADであり、国内の電気設計ではまだ3D CADの普及が進んでいないことがうかがえます。
このように、現状のままでは日本の電気設計業界の効率化の限界は近いのではないでしょうか。市場投入へのスピードが重視される時代に、この壁を打ち破る“何か”が必要です。これらの課題に対するソリューションとして、統合されたデータベースを持ち、自動化の道を歩み始めた電気設計CADの進化に注目が集まります。 もはやツールの枠を超え、インフラとして普及が進む電気設計CADにも、次の進化が求められているのではないでしょうか。
参考