5月26,27日の2日間にわたって行われたオンラインセミナーイベント『制御盤DXメッセ』。制御盤業界を牽引する9社による講演のまとめとおすすめポイントを、モデレーター・剱持氏(オートメーション新聞編集長)が振り返ります。
三菱電機は、e-F@ctoryコンセプトで早くから工場のデジタル化に取り組み、世界の製造業の高度化をリードしてきました。制御盤DXメッセでは、ものづくりのデジタル化について、改めて基本的なところから解説いただきました。講演を聞いた感想とおすすめポイントを紹介します。
「デジタル・マニュファクチュアリングの未来」
FAシステム事業本部 Digital Manufacturing Evangelist
杉山 素 様
よく日本の製造業のDXやデジタル化は進んでないと言われます。その理由はいくつかありますが、個人的には精神面、気持ち的な部分も多いのではと感じています。企業の中にはDXに熱心で前向きな人もいれば、後ろ向き、それどころか否定的で非協力的な人もいます。それをならした時、全体では後ろ向き、または及び腰。そんな状態にあるから、なかなか進んでいかないような事態になっているのではないかと思います。
何事も納得して動かないとなかなか前には進みません。進んでいない、進みが遅いのは納得していないから、腹落ちをしていないから。
よくDXの目的、やる理由について、「時代の流れだ」「負けないために必要だ」、「不確実な時代に生き残るため」ということを聞きます。しかし、こんなマイナス理由を挙げられても気持ちは乗らず、渋々やることになる。身が入っていないので前になかなか進まない。製造業のDXやデジタル化はこうした悪いサイクル、こんな状態に陥っていないでしょうか?
それは制御盤DXも同じ。制御盤業界もDXに取り組み、変化をしていく必要がありますが、順調に進んでいるとは決して言えません。
じゃあ何をすればいいのでしょうか?
制御盤DXに必要なツールやサービスを提供してくれる企業や人材、DXに取り組んでうまくいっている制御盤メーカーもあります。すでに環境や技術は整っています。
あとは心の持ちようと雰囲気づくりだけ。制御盤DXが必要だと思っていない、必要性を気づいていない、制御盤DXをまだ知らない人に対して啓蒙し、気持ちや思考を切り替えることが大切です。
しかし従来のように、「世界はやっている」「時代の流れ」「生き残れない」というメッセージは逆効果です。やるからには制御盤DXに対して前向きになって入ってきて欲しい、やってみたいと思って欲しい、制御盤DXの本質を理解して納得して始めて欲しい。そう思えば思うほど、その伝え方はいつも頭を悩ませます。
「なぜ制御盤業界を含む製造業がDXに取り組まなければいけないのか?」それを人に伝えて啓蒙する時、良い手本、適した教材と感じたのが、「制御盤DXメッセ」の三菱電機・杉山素氏の講演「デジタル・マニュファクチャリングの未来」です。
「製品を早く作って市場に出す」これが製造業のビジネスの根幹で、こうすることで先行者メリットで利益をとりつつ、次の販売機会を生み出す。このサイクルをクルクルと早く回すことが、今も昔も変わらない製造業ビジネスの王道です。だからこそ今は「スピード」が一番大事で、それが強く求められている。杉山氏の講演ではそれをシンプルに説明してくれています。
なぜ世界のものづくり企業がDXに取り組んでいるかというと、根っこでは共通しています。それは「利益の創出」です。「製品を作って売る」サイクルを素早く回して利益を生み出す。そうすることで企業は筋肉質の健康体になり、雇用が安定し、給料も上がる。こうした楽しく生活を送れる環境を作るのがDXの目的です。決して世界や周りの企業がやっているからではなく、自分の未来、自分の幸せのためにやること。だからこそものづくり企業はDXに取り組むのです。
制御盤業界も同じ。限られた時間内に作れる面数が増えれば、それだけ受注可能な枠が増え、それをこなせば売上は上がり、利益も上がっていきます。これが昔から続く制御盤ビジネスの王道です。
制御盤DXの必要性について、制御盤業界には人手不足があり、それ解決するためのDXという話がよくありますが、やっぱりそれは後ろ向きの理由でしかありません。
そうではなく、制御盤DXをやるのは制御盤メーカーが儲かる体質にするため。サクサクとムダなく手間なく効率的に制御盤の設計製造をして、早くお客様の手元に届けて次の受注につなげる。そんな理想の未来を実現するための方法が制御盤のDX。だからこそ制御盤業界もDXに取り組んでいかなければならないのです。
杉山氏の講演では、これ以外にもデジタルとリアル、時間の一致など、DXやデジタル・ツインに取り組む上での注意点など分かりやすく論理立てて説明してくれています。DXをやろう、知ろうという際、初めに見るにはピッタリの内容になっています。ぜひご視聴ください。
また最後に、講演で印象に残った話をひとつ。
杉山氏はDXやデジタル・ツインの取り組み方について「デジタルツインは小さく始めるので良い。いきなり全体をやろうとせず、データを集めて小さな見える化したことも立派なデジタルツインである」と言っています。肩の力を抜いて、できるところからでもやってみる。DXのスタートはそこからで良いのです。
■講演ダイジェスト動画(YouTube)
■EPLANと三菱電機の連携|EPLAN Partner Network(YouTube)