5月26,27日の2日間にわたって行われたオンラインセミナーイベント『制御盤DXメッセ』。制御盤業界を牽引する9社による講演のまとめとおすすめポイントを、モデレーター・剱持氏(オートメーション新聞編集長)が振り返ります。
東洋電制製作所は、電気設計CADとしてEPLANの導入をはじめ、配線支援システムの自社開発、標準化による組立製造工程の見直しなど、制御盤DXに対して挑戦的に取り組む制御盤メーカー。制御盤DXメッセでは、自己変革と進化する制御盤メーカーの前向きな姿勢について語ってくれました。
【基調講演】株式会社東洋電制製作所
「多様化する筐体に対応。TEC-EPLAN生産方式のご紹介」
営業本部長 新田 武史 様
生産品質統括部長 常川 聡志 様
営業本部 木谷 進吾 様
制御盤DXの良いところと言えば、制御盤の設計・製造・運用効率が高まるというのはもちろんですが、一方でデジタル化に真剣に向かい合い試行錯誤を通じて、思わぬ副産物が生まれる、知らぬ間に技術の幅が広がり、企業の体力が強化されるという点もあります。これが後々のビジネスモデルの創出や企業文化の変革といったDXの次のステップへの基盤となります。制御盤メーカーの東洋電制製作所の取り組みはその顕著な事例でした。
東洋電制製作所は富山県にある制御盤メーカーで、国内と海外に生産拠点を持ち、量産品で月産1100面、一品もので月100面の生産能力があります。設計から製缶、塗装、組立、配線、検査、現地調整までの社内一貫体制があり、工作機械をはじめ産業機械、プラント機械、搬送装置、半導体製造装置など多種多様な制御盤の製作を請け負っています。
生産のリードタイムの短縮、生産と製造でそれぞれに資料を作るムダ、仕様変更発生時のデータ連携、ペーパーレス化といった現場の課題を解決するため、総合電気設計CADとしてEPLANを導入し、現在も活用しています。
もちろんデータ活用で制御盤DXに踏み出したというのは素晴らしいのですが、それ以上に興味を引いたのが、自社オリジナルの生産方式「TEC生産方式」を生み出し、それに関連する自社システムまで開発してしまったことです。
開発したのは「TEC配線支援システム」という製造工程の作業支援システムで、EPLANで自動作成された帳票類のデータを加工して製造工程に合わせた形でタブレットに表示したり、データベースを整備して現場からのデータも入力できるというもの。すでにあるパッケージソフトをそのまま使うのではなく、それを参考としつつもMAXの生産効率化を目指して自社に最適化システムを開発したというのはとても意欲的な挑戦で、その経験と実績はこれからに向けた大きな資産になります。
また、それと合わせて自社の生産方式も再構築し、制御盤の回路構成と製造工程を見直して共通部分はユニット化して専用のサブラインで生産し、メインラインではそのユニットを使って最終組み立てを行うという2本のラインを走らせるようにしました。これを連携させることでリードタイム短縮に成功したそうです。
単にデジタル技術を導入するだけでなく、仕組みまで見直す。これは企業として大きな決断であり、まさに「変革」。しかもそれが生産能力の向上になり、ひいては利益創出につながっている。制御盤DXの目指すところ、個人的には理想形とも言っていいのではないかと思っています。
デジタル技術を導入し、自らもそれを開発した。しかも生産方式という、ものづくりの企業にとっては聖域とも言えるところに手を加えて進化させた。この経験は、これからも続く制御盤DXの取り組みにとって必ず有益なものになります。
「DXは短期的な視点ではなく、中長期的な視野に立って取り組むものであり、目先の収支などに捉われずに取り組むことが重要である」
制御盤DXメッセでこう語っていたのは、富士電機機器制御の講演だったでしょうか。まさにこれが真理。
東洋電制製作所の取り組みは、制御盤メーカーが取り組むDXのモデルケース。その事例、一度聞いてみる価値は十分にありますよ。
■講演ダイジェスト動画(YouTube)