世界標準の電気設計CAD EPLANブログ

回路設計をモジュール化とは?モジュール化の基礎とメリット熟練のノウハウに頼らないモジュール設計へ

作成者: Admin|Aug 7, 2023 10:00:00 PM

回路設計のモジュール化は日々の設計を効率化するだけでなく、熟練の差による蓄積された設計ノウハウを必要としない回路設計を可能にします。さらにモジュール設計により図面と部品表を連携設定することで、誤発注によるコスト削減効果も見込めます。製造業界全体を取り巻く人材不足問題を勝ち抜くためにも、モジュール化で作業効率の改善を図る必要があります。

・・・とここまでいいましたが、そもそも回路設計のモジュール化とは何でしょうか。

回路設計のモジュール化とは何か、従来の回路設計からモジュール化することのメリットを解説します。

もくじ
  1. 回路設計でよくある仕様変更&回路書き直し
  2. 従来のモジュール化されていない設計の問題点
  3. 回路設計のモジュール化とは
  4. モジュール化のメリット
  5. 導入事例:EPLANのモジュール化(マクロ機能)を活用
  6. モジュール設計で今まで培ったノウハウを最大活用

回路設計でよくある仕様変更&回路書き直し

回路設計から盤内配線をするためには、5つの工程が必要です。

  1. 設備に必要なモーターなどのアクチュエータを選定
  2. 選定した使用機器の消費電流から保護回路を設計、電線太さの選定
  3. 回路図から制御盤内に部品を配置したハード図を設計
  4. アクチュエータ、保護回路、制御盤の使用機器を部品表にする
  5. 必要部品を発注し組み立て・配線

工程の中で特に時間がかかるのは、

2.選定した使用機器の消費電流から保護回路を設計、電線太さの選定」です。

安全にかかわる保護回路設計で計算間違いをすると、最悪の場合には電線が発火し火災事故に繋がる可能性がありますので注意が必要となりますが、その選定に伴う計算自体は複雑ではありません。

しかし、設備の立ち上げ時には仕様変更などでアクチュエータの選定に工程を戻されることがしばしばあります。そうなると、回路は書き直しになり、設計工数が伸びてしまいます。

工程が戻った際の対応は、納期が限られていることからノウハウを有した熟練の設計者がカバーすることがほとんどで、彼らへの負担が設計現場の大きな課題となっています。

従来のモジュール化されていない設計の問題点

モジュール化されていない設計は、仕様や機器変更の対応に時間がかかります「部品の選定」「回路設計」「部品表の作成」が連動してないため、仕様変更があるとすべてを見直す必要があるためです。

しかも仕様変更は珍しい話ではありません。アクチュエータの能力をアップした場合は、保護回路の電流を再計算し、部品表を更新しなくてはなりません。部品表の更新忘れは誤発注に繋がり、それが納期に与える影響はとても大きいです。

また設計者は自身のノウハウを利用し図面を修正しますが、熟練度によって修正時間は大きく異なります。

回路設計のモジュール化とは

回路設計におけるモジュール化とは、社内で標準化された回路を繰り返し利用できるようにすることです。従来の設計でも回路の流用は行われていましたが、今はデータベースに回路を登録することでアクチュエータの選定から部品表の作成までを連動することが、モジュール設計の主流となっています。

設計者の熟練度に左右されていた設計をあらかじめデータベースに登録しておくことで、必要な部品を選択するだけで回路設計できるようになり、変更にも柔軟に対応できます。

回路に用いられる電気部品も紐づけして登録しておくことで、回路を設計した段階で自動的に部品表を作成することも可能です。

一連の作業が連動されることで、制御盤の設計は熟練度に関係なく一定の品質のものが完成します。

EPLANで「モジュール設計」をするにはマクロ機能を使います。

参考:電気設計でマクロ機能がもたらす5つのメリット|EPLANブログ

モジュール化のメリット

モジュール化の最大のメリットは電気設計の効率化です。

電気設計者は回路図だけを書くことが仕事ではありません。回路図を書いた後、Excelや別ファイルを使い部品表を作っている、過去の図面をコピーして変更箇所を1つずつ手作業で直している…というような手作業。これをモジュール化で、標準化された回路図を繰り返し使用し、部品表や帳票類を自動で作成する。そして生まれた時間を使い、設計者はほかの業務をすることができます。

導入事例:EPLANのモジュール化(マクロ機能)を活用

たとえば、制御盤メーカーのHPS社(ドイツ)での導入事例では以前のわずか20%の時間で電気設計が済むようになりました。HPS社ではモジュール設計はもとより自動化にも力を入れており、制御盤パネル80100台を受注から68週間で設置しています。
 
同社はマクロ機能についてこう述べています。
 
「保存されているマクロは、すでに使った実績がありますので、問題が起きません。そのため、設計品質を改善できるという保証になります。」

 

参考:【制御盤メーカー】HPS社(ドイツ)導入事例 EPLANブログ

モジュール化で繰り返し使える回路を準備したことで、同社はEPLAN Cogineerという回路図自動生成のソフトウェアも活用しています。

もし回路図自動生成EPLAN Cogineerにご興味を持った方は…こちらの記事をどうぞ。

参考:Cogineerのすべてがわかる!回路図自動生成 Cogineer機能紹介ウェビナーレポートEPLANブログ

モジュール設計で今まで培ったノウハウを最大活用

技術の継承は伝統工芸などの職人技に限られたことではなく、電気設計の分野でも急務となっています。今まで設計者に蓄積されていたノウハウをモジュール化すれば、熟練度に頼らない設計環境が整います。図面を流用するために過去のデータを検索する必要もなく、設計経験の浅い設計者でも一定品質の設計が可能です。

一方でデータベース化されたモジュール設計の障害となるのは、立ち上げに相応のコストがかかることです。コストというのは費用面の話だけではありません。ノウハウのモジュール化には、過去の物件から必要な情報を洗い出し、今あるノウハウの落とし込みをする作業が必要です。

しかし、立ち上げに労力がかかるからとモジュール化を後回しにすれば、設計人材は先細りしていきます。企業や設計チームに体力があるうちにモジュール設計を取り入れることが、ノウハウを次代へ継承する鍵になります。EPLANでは設計資産のモジュール化をサポートしていますので、もしお困りの場合はお気軽にお問い合わせください。

公開日:2021年2月24日
最終更新日:2023年8月8日