電気設計:自動化で時間を短縮 ― 以前の20%の時間で済むように
プランニングプロセスを自動化できれば、プロジェクトに要する時間が短くなり、品質も向上するというメリットが生まれます。さらにドキュメント作成など付随的なプロセスも容易に行えるようになります。では 実際のところ、全プロセスでどれほど時間を節約できるのでしょうか?
制御盤メーカーのHanseatic Power Solutions GmbH(HPS)社はEPLAN Cogineerを導入し、その 設計製造を数段階にわたって自動化しました。同社は今、導入前後での比較をもとに実際に短縮できた時間を記録しています。
その結果、電気設計に限ると、 以前の時間のわずか20%で済むようになったのです。
HPS社が製造する制御盤は、発電所の非常電源供給用のほか、病院やクルーズ船の発電設備向けです。
こうした非常に要求の厳しいエネルギー分野に応えられる制御技術を同社は設計・製造しています。発電所や製油所などを運営する顧客に向けて、営業からプロジェクトプランニング、保守サービスまで様々な業務を担っています。
80~100台の制御盤パネル、受注から納入・設置まで6~8週で完了
HPS社は、2009年の設立以来、制御盤のプロジェクトプランニングや設計・製造を最大限に自動化することを最優先に取り組んできました。
その結果、複雑なプロジェクト(80~100台の制御盤パネルで構成)であっても、 受注から納入・設置まで6~8週で完了できるまでになりました。
こうした迅速な対応ができる理由の一つが、たとえ1台だけしか生産しないというプロジェクトでさえ、EPLANプラットフォームを一貫して利用していることです。
3DプランニングにはEPLAN Pro Panelを採用し、電力分配器や銅製ブスバーは、そのPro Panelの銅モジュールを用いて3Dで設計を済ませます。また、(外部の)ケーブルアセンブリは配線モジュールをもとに設計しています。
EPLAN Pro Panelを使って組み立てを行うHPS
回路図を素早く生成
HPS社は(したがってその顧客も)この数カ月にわたり、スループット時間が大きく短縮されたことに大きなメリットを感じています。
EPLAN Cogineerは、全くプログラミングを必要とせず、またコンフィグレーションやバリアント管理に専門的な知識が無くても回路図の自動生成が可能です。基本的なマクロに関する知識さえあれば、すぐに使い始めることができます。
1台限りの製品でも標準化
制御盤を1台ずつ製造しているメーカーが自動化や標準化を活用していると聞くと、最初は驚くかもしれません。HPS社の創立者で社長のBernd Mähnss氏は次のように話しています。
「当社が扱うプロジェクトは、当然ながらどれも特殊仕様です。しかし、ビルオートメーションには換気制御回路や防火ダンパーなど繰り返し利用する機能やモジュールがあります」Mähnss氏
そうした機能に関して、HPS社ではCogineerにマクロライブラリーを保存しておき、電気設計者が必要に応じてアクセスできるようにしています。
HPS社でサービス・技術営業に加えてCogineerの運用も担当するDennis Burmeister氏は次のように説明しています。
「ユーザーは必要な電源ユニットを選択だけ行います。その他のすべては、モーターの保護や修理のための適切なスイッチ類から端子やケーブルの断面構造まで、 自動的に決定され回路図に盛り込まれます。さらに 機能の名称も回路図に自動的に挿入されます」
ルーティングや熱特性などは、実績に基づいて
回路図は、選択したオプションや電源供給のタイプに応じて自動的に生成されます。
しかし Cogineerには、こうした設計の自動化以上のメリットがあります。
「保存されているマクロは、すでに使った実績がありますので、問題が起きません。そのため、設計品質を改善できるという保証になります。設計者が電力値などを後で変更する際にも、時間のかかる込み入った作業を行う必要はありません。Cogineerが行ってくれるからです」
この回路図の自動生成にはルーティング機能も含まれていますので、対応するEPLANモジュールを使えば、HPS社からフエニクス・コンタクト社へ端子類を直接かつ自動的に発注することもできます。また、EPLANソフトウェアで選択したすべての部品の消費電力計算にはRittal Thermを使っています。そのため、設計者は制御盤で“高温になる場所”を特定することも可能です。
次のステップ:EPLAN eVIEWによるペーパーレス生産の実現
長年HPS社は、プリントアウトした書類をバインダに綴じ、ドキュメントを用意するのを標準としてきました。しかし、これに替えて、各制御盤にQRコードを貼付することで、ユーザーもHPS社が管理する詳細なドキュメントをオンラインで閲覧できるようにしました。
「これにより、“デジタルツイン”のような感覚で、実際のキャビネットの全ライフサイクルを通じて常にドキュメントが最新に保たれるという利点が生まれました」
その次のステップは、EPLAN eViewを利用したペーパーレス“工場”の実現です。
「当社で回路図を必要とするのはすでに検査ときだけになっています。生産現場では、レイアウトプランで十分です。さらに間もなく、検査ステーションにもeViewを配備する予定です。そうなると保守スタッフも規格準拠のドキュメントに直接コメントを記入できるようになります。これがさらなる時間の節約になり、作業の重複も避けられます。」
まとめ:自動化で大きな効率向上が可能に
EPLAN Cogineerを導入した後、HPSでは、自動化の有無によって受注処理の時間がどれだけ変わったかを比較しています。
これにはCogineerに加えて、機械的な加工やケーブルと端子台の自動組立に関わるEPLANの効果も考慮されています。
その比較結果によると、 設計は25%短縮され、 電気系プランニングに至っては80%もはやくなりました。 機械系の生産に必要な作業が半分になり、 電気系の生産は40%はやくなっています。また ドキュメントの作成は、通常要する時間の4分の1で済むようになりました。
「なにより、以前から当社の納期は他社より非常に短いと定評がありましたが、自動化とプランニングプロセスの統合でその 納期がさらに約35%も短縮されました。同時に、ドキュメントも詳細になり、実績のあるマクロやモジュールを活用できることから設計品質も向上しました」
プレスリリース
HPS社の事例が紹介されているプレスリリースが下の画像からダウンロードできます。