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2024/04/02
制御盤DXメッセ
5月26,27日の2日間にわたって行われたオンラインセミナーイベント『制御盤DXメッセ』。モデレーター・剱持氏(オートメーション新聞編集長)が、イベント全体を振り返ります。
制御盤DXメッセでは、制御盤を作る側と盤用機器・サービスを売る側の計9社から、制御盤業界のDXについて語ってもらいました。制御盤業界の現在地とこれから、制御盤の設計・製造・運用を効率化する技術・サービスなど盛りだくさん。モデレータ としての立場から、全体を通じての総括とおすすめポイントを紹介します。
経済産業省によると、DXの定義はこうらしいです。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
一見すると分かりにくいですが、とどのつまりは、「変化の激しい経営環境を認識し、デジタル技術を積極的に活用して自社のビジネス基盤を強化・差別化し、利益を上げ続ける会社にしていこう。そうなるためには企業文化をひっくり返すような覚悟と実行力で取り組む必要がある」といったところでしょうか。
これを制御盤業界に当てはめて、「制御盤業界もデジタル技術をもっと活用し、まずは設計や製造、運用の効率を高めることで経営基盤を強くしていこう。さらにその先の新しい制御盤ビジネスも考えていこう」というのが制御盤DX。
先日の制御盤DXメッセではこれに即した話を、制御盤を作っている制御盤メーカー、彼ら向けに機器やソフトウェア、サービスを提供しているメーカーからしてもらいました。
DXとは何か?のような基本的なところから、制御盤業界のDXとは?そのために何が必要か、設計・製造・運用を効率化する便利な技術とツール、その使い方、次の制御盤業界のビジネスまで、一通りはカバーできていて内容も盛りだくさんでした。
制御盤を作る側の講演としては、Team Cross FAと東洋電制製作所、マナ・デザインワークスがあり、実際の制御盤DXに対する取り組みを紹介してくれました。
Team Cross FAでは「標準化」をテーマとし、どのようにして標準を作って運用しているのかを、東洋電制製作所はEPLANを使い、紙図面中心の設計・製造からデータ活用に変えていくまでの実例を、マナ・デザインワークスは海外案件の増加と規模拡大というEPLANを使ったメリットを取り上げました。
標準化や電気設計CADをベースとしたDX基盤の整備とデータ活用をうまく効率化につなげ、実益を上げている事例としてとても参考になりました。
盤内機器やソフトウェアを提供する側としては、三菱電機、富士電機機器制御、ロックウェル オートメーション ジャパン、フエニックス・コンタクト、EPLAN、リタールの講演がありました。
制御盤DXを含めて、ものづくり企業がなぜDXをやらなければいけないのか、何を目指して行うのかといったDXの基本を紹介してくれたのが三菱電機。
制御盤DXと言った際、設計と製造、運用までの一連の作業を効率化する必要があります。それぞれに対する効率化への解を提案したのが富士電機機器制御とフエニックス・コンタクト。
富士電機機器制御は、設計支援に向けてはEPLANの製品データベースへの製品登録、製造支援に対してスプリング接続による配線作業の効率化、運用に向けて盤内機器とIoTを活用した制御盤の高付加価値化を紹介。
フエニックス・コンタクトは設計に対して盤内機器の配置支援ソフトウェア、配線作業支援としてのPush-In、運用に向けて安全な接続を実現するためのセキュリティを話してくれました。
ロックウェル オートメーション ジャパンは、「つながるメリット」をテーマとし、盤内機器をつなげて制御盤を構成した際、どんなメリットが生まれるのか。高付加価値化した制御盤を作り、使うメリットを取り上げました。
主催者のEPLANとリタールは、EPLANは、電気設計CADとして設計を支援するツールではありつつも、制御盤DXではデジタルデータを作って管理し、活用する基盤・プラットフォームであり、そのための機能や使いこなし方を紹介。
リタールは、主に制御盤の製造に対する自動化ソリューションを提案。制御盤DXでデータ活用する基盤が整えば、次は手作業で行っている作業準備や組み立てを自動化する番になります。そこに向けた自動機とそのソリューション、ドイツでの制御盤製造の自動化事例などを話しました。
とかくDXは、ITシステム側に寄った話や、取り組まないとダメになるといった漠然とした不安感を煽る話が耳に入ってきがちです。確かにデジタルツールやデータを使うためにはITシステムは絶対に必要だし、取り組まない企業が今後は不利になっていくのは間違いありません。
だからと言って、よく世間で言われるようにITシステムやデジタルツールを導入しても、それは制御盤DXでは通用しません。制御盤メーカーや制御盤業界にはそれ独自のビジネスや商流、さらには設計製造プロセスがある訳であり、それに応じた環境整備ができなければ意味がない。
制御盤業界の現在地は、アナログ的な受注生産で、経営基盤の弱い下請け型ビジネスが主流です。それをどう変えて利益を上げられるようになるか。その方法の一つが制御盤DXです。
これからは、受注した案件を効率的に作って納品していって受注可能・生産可能数を増やすことが第一段階とし、次に単価が高い案件を増やすことで利益を増やして経営体質を強化。そして自社製品となる標準盤を作って提案型になるというステップを踏み、下請けから脱却して自らがメーカーとなって主導権を握れるようになるのが目標地点の一つの形。このためにデジタルの力を使うのであって、まずはそのストーリーを描くことが一番大事です。
その点、制御盤DXメッセの各講演は、制御盤の設計・製造・運用プロセスを効率化し、まずはそこで経営基盤を強化しようというファーストステップに則っていて、地に足のついた、今から始められるDXへの取り組みだったのではないかと思います。
制御盤DXといっても、結局は現在の制御盤メーカーとしての取り組みの延長線にある話。個人的には
・制御盤メーカーがこれから儲けていくにはどうしたらいいか?
・QCDを高めて利益を上げるにはどんな技術やサービスを取り入れればいいのか?
・今とは違う稼ぎ方ができないか?
・制御盤設計・製造でムダが多くて困っているが、どう改善していけばいいのか?
くらいのレベル感で考え、制御盤DXメッセの講演を見ていただけると、すんなりと話が入ってくるような気がします。でも、見て知っておくのとそうでないのとでは大違い。資料で配布している「制御盤DXの教科書」とともに、制御盤DXメッセ、ぜひご覧ください!
■制御盤DXメッセ 公式サイト
■オートメーション新聞 公式サイト
■講演ダイジェスト動画(YouTube)