IEC規格とは?JIS規格、ISO規格との違い
2024/04/02
トレンド
制御盤は自動車やパソコンのように単体で使われるものではありません。機械や設備をコントロールするための電気制御機器や電気機器が搭載された箱で、「機械の頭脳」の役目を担います。工場で働く工作機械やコンベア、ロボットなどはすべて制御盤からの指示を受けて動いています。また、ビルのエレベータや空調の制御、高速道路のETC、浄水場のポンプといった社会インフラの監視とコントロールでも制御盤が活躍しています。ここでは、制御盤とは何なのか、制御盤設計の流れやどのような機器にセットするものなのかなど、制御盤設計の基礎知識をご紹介します。
ほとんどの機械や設備は制御盤により電気制御されています。制御盤は箱型をしており、その中には電気制御に必要となる制御機器、電気機器や電気部品が入れられています。制御盤設計とは、この制御盤を設計することであり、具体的には機械や設備が思った通りに動くように、制御盤の仕様や制御したい機器との取り合い、盤内の部品選定や機器配置などをすることです。
制御盤設計の流れについて一例をご紹介します。
製作する制御盤の仕様を決めるため、打ち合わせや事前調査が必要です。制御盤は機械や装置を電気制御する機器なので、搭載されるものの用途やクライアントがどのように使うかのイメージがなければ、設計できません。クライアントや製作において協力してもらう関係者と、認識のずれが生じないよう打ち合わせや事前調査を実施します。
作業内容はクライアントからどのような仕様が回ってくるかによって変わります。例えば仕様がすでに決まっていて使用する部品の指定や配置が済んでいる場合や、回路図のみで製作依頼が来た場合など。後者の場合は熱計算や部品選定、部品の配置を含めた設計をし、クライアントの承認を得ます。
また、制御盤が使用される環境も確認しておく必要があります。普通に屋内で使われるだけなら問題ありませんが、用途によっては高温の室内や水がかかる可能性のある環境で使われるケースもあります。その場合は、その環境まで考慮しなければいけません。
製作仕様書完成後、それに従い設計をします。目的とする制御盤製作のために必要な電気機器は何かを考え、盤の大きさや盤内における電気機器の配置を設計していきます。部品の干渉を考慮しながら2Dの盤内配置図を作成します。
ハード側だけでなく制御フローや回路図など、ソフト面での設計も必要です。
使用している電気CADにもよりますが、シンボルとシンボルを手作業でつなぎます(結線)。過去の図面を参考にしながら回路設計を進めます。From-Toを目やペンを使い確認しながら結線配線図を作成する場合もあります。使用部品についても、「以前使用した部品を今回は変える必要がある」と設計時に覚えていても、部品を調べ、製作・購入部品リストを作成する時に変更を忘れて前回と同じもの記載してしまう、型番を間違えるというミスもよく発生します。このようにして製作するための設計図を作り上げていきます。
EPLANなら電気設計を効率化する機能が備わっています。
参考:EPLAN Electric P8 製品概要ご紹介|EPLAN Japan公式ブログ
設計図が完成したら、製作に入ります。図面に基づいて盤の製造や電気機器の配置及び配線を行っていきます。もし製作するうえで別途機器の購入が必要であれば、納期に間に合うよう事前に購入しておかなくてはいけません。もし部品の手配に納期がかかる場合や、代わりの部品で対応する場合は配置を考え直す必要があるかもしれません。代わりの部品を取り付けるとサイズが大きくなり、ほかの部品が入らなくなってしまう。部品同士が干渉して取付穴の加工をやり直す必要が出るという事態が発生することがあります。
EPLAN Pro Panelを使えば組み立て前に干渉チェックができます。
参考:EPLAN Pro Panel 製品概要ご紹介|EPLAN Japan公式ブログ
制御盤が完成したら次は試運転に入ります。クライアントと打合せした仕様で動くか、トラブルはないか、納入するまでに検査します。
もし、問題が見つかれば納入日までに修正が必要となります。動かない!というのは、ハード配線(ブレーカー、スイッチ、リレー、モーターなどの負荷)のときにわかることがほとんどです。タッチパネルやPLCのI/O関係は実際電源入れて動かしてみて、動かない!と発覚することもあります。回路図と違うところに配線していないか、断線していないかの確認は、電源を入れる前にテスターで導通チェックして確認します。
クライアントに納入後は、制御盤の取り付け及び配線工事が必要となります。機械にはモーターやセンサーなどが搭載されていることもあるので、その場合は機器への配線工事も必要です。
機器への制御盤取り付けが終わったら、最後にもう一度試運転を行います。納入前に試運転と検査をしたときは完璧な状態であったとしても、実際に機器に搭載すると、機器との信号のやりとりや配線が不十分で、思ってもいないトラブルが起きることがあります。輸送中に断線、現地で機械と配線を間違えたなど。もし万が一設計を間違えていた場合は、現地で動かして後から設計を直します。その時設計変更箇所はチェックしておきます。
制御盤取り付け後にも試運転を実施することで、制御盤が正しく機能しているかどうかの最終的な確認を取ることができるのです。
実際に制御盤を使う機器にはどのようなものがあるのでしょう。その一例をご紹介します。
工場の製造現場ではさまざまな機械が作動しています。身近なものでは食品工場見学で見る食品製造ラインがイメージしやすいのではないでしょうか。そのすべての機械は電気で動いているので、当然制御盤が必要です。
製造現場では多くの機器がそれぞれ単独で動いているのではなく、連携して動いています。そのため制御盤も各機器単独での制御だけでなく連携した制御も必要になり、それだけ設計も複雑になります。
フェリーやタンカーなどの大型船にも制御盤は搭載されています。船のどの機器を制御するか、船体との取り合いを考慮して設計をしなくてはいけません。1枚の大きな紙に全体の配線図が記入されている場合、接続チェックで目と肩が凝ることもあります。また船の中では作業スペースが限られていることもあります。制御盤取り付け時やメンテナンス時などに必要となる作業スペースが十分確保されているか確認しておきましょう。もし、どうしても作業スペースが確保できないのであれば、その点も踏まえての設計が必要となります。
制御盤が制御するのは機械の動きだけではありません。センサーで温度を計測し、その結果から温度を調整するようなシステムの制御にも制御盤は使われます。一般的には、サーミスタと言って、温度で抵抗値が変わるセンサーを使い温度を測定しています。センサーの値を温調器が電流値で読み取り、設定した温度になるように、冷房だったら冷媒ガスを使って冷やし、暖房だったらヒーターを使って、温めます。ON/OFFで制御する場合と、常に電圧を制御して常に一定になるように計算する制御(PID制御)があります。
どのようなセンサーを使うか、温度調節の仕方はどのようにするかなど機械制御では考慮しないようなことを念頭に置いて設計しなくてはいけません。
制御盤とは何なのか、その設計の流れ、制御盤をセットする機器の例など、基礎的な知識をご紹介しました。制御盤をセットで使う機器はほかにも数多くあり、機器によっては設計の流れも変わってきます。ここでご紹介した内容はあくまでも一例です。
* この記事は2020年11月6日にEPLAN Japan 公式ブログに掲載した記事を再編集、再掲載いたしました。