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押さえておきたい制御盤設計の基礎知識 - 世界標準の電気設計CAD EPLANブログ

作成者: Admin|Jul 30, 2025 1:45:00 AM

制御盤は自動車やパソコンのように単体で使われるものではありません。機械や設備をコントロールするための電気制御機器や電気機器が搭載された箱で、「機械の頭脳」の役目を担います。

工場で働く工作機械やコンベア、ロボットなどはすべて制御盤からの指示を受けて動いています。また、ビルのエレベータや空調の制御、高速道路のETC、浄水場のポンプといった社会インフラの監視とコントロールでも制御盤が活躍しています。

ここでは、制御盤とは何なのか、制御盤設計の流れやどのような機器にセットするものなのかなど、制御盤設計の基礎知識をご紹介します。

もくじ

制御盤設計とは

ほとんどの機械や設備は制御盤により電気制御されています。

制御盤は箱型をしており、その中には電気制御に必要となる制御機器、電気機器や電気部品が入れられています。制御盤設計とは、この制御盤を設計することであり、具体的には機械や設備が思った通りに動くように、制御盤の仕様や制御したい機器との取り合い、盤内の部品選定や機器配置などをすることです。

以下、制御盤設計に必要な知識として、制御盤の役割や主要部品、筐体について解説します。

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制御盤の役割を知る

制御盤は、電力の供給や配分に加え、機械装置を正確かつ安全に動作させるため、主要な電気部品をひとつのまとまったスペースにまとめられているものです。

リレーやPLCなどの制御装置が、入出力信号を論理的に処理し、機械の運転・停止・異常時の遮断などを行います。さらに、非常停止やインターロック機構を通じて、事故防止や緊急対応を担う役割も果たします。

入力を受け取り、決定し、機械に何をするべきか指示をする。いわば、制御盤は産業機械類において欠かせない「司令塔」といえるでしょう。

制御盤の主要部品を把握する

制御盤内部には、制御機器から安全装置まで多岐にわたる部品が配置されています。

制御盤の主要部品は以下のとおりです。

  • 端子台:制御盤内外の電線を中継接続する器具。盤内機器と外部機器を分かりやすく・安全に接続でき、メンテナンス性を向上させます。

参考リンク:Data Portal 東洋技研部品データ

  • 遮断器(ブレーカー):電源のON/OFFを操作し、過電流や漏電時に回路を自動遮断して機器を保護します。

参考リンク:Data Portal 三菱電機部品データ

その他、トランス(変圧器)やサーボアンプ、ヒーター・除湿器など、用途に応じた補助機器が搭載されることもあります。

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制御盤筐体(キャビネット)の重要性を理解する

制御盤の筐体は、部品を収納するだけでなく、内部部品を衝撃などから保護し、長期にわたって機器の信頼性を維持するために重要な構成要素です。多くは金属製の堅牢な構造になっており、高水準の防塵・防水性能や耐熱性能、耐震性能が求められます。

制御盤には様々な規格もあります。
参考リンク:制御盤(コントロールギア)の規格の種類と役割について知ろう|リタールブログ

また、筐体内の部品配置は熱対策や配線管理に関わるため、冷却ファン設置の要否やスペーサーによる間隔設計も含め、盤内環境を最適化する設計が必要です。

適切な筐体を選定することで、制御盤の耐久性と安全性を高め、言い換えればそれは、産業機械類の安全を保護することにもなります。

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制御盤設計の流れ

制御盤設計の流れについて一例をご紹介します。

打ち合わせや事前調査

製作する制御盤の仕様を決めるため、打ち合わせや事前調査が必要です。制御盤は機械や装置を電気制御する機器なので、搭載されるものの用途やクライアントがどのように使うかのイメージがなければ、設計できません。クライアントや製作において協力してもらう関係者と、認識のずれが生じないよう打ち合わせや事前調査を実施します。

作業内容はクライアントからどのような仕様が回ってくるかによって変わります。
例えば仕様がすでに決まっていて使用する部品の指定や配置が済んでいる場合や、回路図のみで製作依頼が来た場合など。後者の場合は熱計算や部品選定、部品の配置を含めた設計をし、クライアントの承認を得ます。

また、制御盤が使用される環境も確認しておく必要があります。普通に屋内で使われるだけなら問題ありませんが、用途によっては高温の室内や水がかかる可能性のある環境で使われるケースもあります。その場合は、その環境まで考慮しなければいけません。

電気設計・構造設計

製作仕様書完成後、それに従い設計をします。目的とする制御盤製作のために必要な電気機器は何かを考え、盤の大きさや盤内における電気機器の配置を設計していきます。部品の干渉を考慮しながら2Dの盤内配置図を作成します。


ハード側だけでなく制御フローや回路図など、ソフト面での設計も必要です。

使用している電気CADにもよりますが、シンボルとシンボルを手作業でつなぎます(結線)。
過去の図面を参考にしながら回路設計を進めます。From-Toを目やペンを使い確認しながら結線配線図を作成する場合もあります。

使用部品についても、「以前使用した部品を今回は変える必要がある」と設計時に覚えていても、部品を調べ、製作・購入部品リストを作成する時に変更を忘れて前回と同じもの記載してしまう、型番を間違えるというミスもよく発生します。

このようにして製作するための設計図を作り上げていきます。

 

Eplanなら電気設計を効率化する機能が備わっています。
参考:EPLAN Electric P8 製品概要ご紹介|EPLAN Japan公式ブログ

製作

設計図が完成したら、製作に入ります。

図面に基づいて盤の製造や電気機器の配置及び配線を行っていきます。

もし製作するうえで別途機器の購入が必要であれば、納期に間に合うよう事前に購入しておかなくてはいけません。もし部品の手配に納期がかかる場合や、代わりの部品で対応する場合は配置を考え直す必要があるかもしれません。代わりの部品が元の部品よりも大きいと、部品同士の干渉を避けるために取付穴の加工をやり直さなければならない場合があります。

設計段階では入ると思われていた配置も、実際に取り付けて見ると部品同士の干渉、扉との干渉が発見されることもあります。
3D設計ツールを活用すれば、盤内の機器干渉を事前に検出することが可能なので、手戻りを防止することができます。

Eplan Pro Panelを使えば組み立て前に干渉チェックができます。
参考:EPLAN Pro Panel 製品概要ご紹介|EPLAN Japan公式ブログ

また、搭載機器が増えるほど配線が膨大で複雑になります。

一般的に電線は盤内の機器配置後に製作開始されます。現物に這わせながら長さを決めます。

アナログ手法では搭載機器が増え、かつ、小型化が求められる制御盤製作の作業負荷が大きくなります。配線でも3D電気設計を使えば、3Dデータを使い、事前に最適な配線ルートと正確なケーブル長を算出できるため、機器の購入や配置を待つことなく、電線の加工作業に入ることができます。設計で利用した3Dデータは、配線作業時に配線ルートを確認するうえでも役立ち、作業効率の向上につながります。

 

試運転と検査

制御盤が完成したら次は試運転に入ります。クライアントと打合せした仕様で動くか、トラブルはないか、納入するまでに検査します。

もし、問題が見つかれば納入日までに修正が必要となります。動かない!というのは、ハード配線(ブレーカー、スイッチ、リレー、モーターなどの負荷)のときにわかることがほとんどです。タッチパネルやPLCのI/O関係は実際電源入れて動かしてみて、動かない!と発覚することもあります。回路図と違うところに配線していないか、断線していないかの確認は、電源を入れる前にテスターで導通チェックして確認します。

現地での制御盤取り付け工事

クライアントに納入後は、制御盤の取り付け及び配線工事が必要となります。機械にはモーターやセンサーなどが搭載されていることもあるので、その場合は機器への配線工事も必要です。

制御盤取り付け後の試運転

機器への制御盤取り付けが終わったら、最後にもう一度試運転を行います。

納入前に試運転と検査をしたときは完璧な状態であったとしても、実際に機器に搭載すると、機器との信号のやりとりや配線が不十分で、思ってもいないトラブルが起きることがあります。輸送中に断線、現地で機械と配線を間違えたなど。もし万が一設計を間違えていた場合は、現地で動かして後から設計を直します。その時設計変更箇所はチェックしておきます。

制御盤取り付け後にも試運転を実施することで、制御盤が正しく機能しているかどうかの最終的な確認を取ることができるのです。

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制御盤を使う機器の例

実際に制御盤を使う機器にはどのようなものがあるのでしょう。その一例をご紹介します。

製造設備

工場の製造現場ではさまざまな機械が作動しています。身近なものでは食品工場見学で見る食品製造ラインがイメージしやすいのではないでしょうか。そのすべての機械は電気で動いているので、当然制御盤が必要です。
製造現場では多くの機器がそれぞれ単独で動いているのではなく、連携して動いています。そのため制御盤も各機器単独での制御だけでなく連携した制御も必要になり、それだけ設計も複雑になります。

大型船

フェリーやタンカーなどの大型船にも制御盤は搭載されています。船のどの機器を制御するか、船体との取り合いを考慮して設計をしなくてはいけません。1枚の大きな紙に全体の配線図が記入されている場合、接続チェックで目と肩が凝ることもあります。また船の中では作業スペースが限られていることもあります。制御盤取り付け時やメンテナンス時などに必要となる作業スペースが十分確保されているか確認しておきましょう。もし、どうしても作業スペースが確保できないのであれば、その点も踏まえての設計が必要となります。

温度管理システム

制御盤が制御するのは機械の動きだけではありません。
センサーで温度を計測し、その結果から温度を調整するようなシステムの制御にも制御盤は使われます。一般的には、サーミスタと言って、温度で抵抗値が変わるセンサーを使い温度を測定しています。センサーの値を温調器が電流値で読み取り、設定した温度になるように、冷房だったら冷媒ガスを使って冷やし、暖房だったらヒーターを使って、温めます。ON/OFFで制御する場合と、常に電圧を制御して常に一定になるように計算する制御(PID制御)があります

どのようなセンサーを使うか、温度調節の仕方はどのようにするかなど機械制御では考慮しないようなことを念頭に置いて設計しなくてはいけません。

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制御盤の安定稼働には「熱対策」が不可欠

産業機器の制御盤は屋内の管理されたスペースに設置されますが、使用する電子機器部品の発熱による内部の機器の故障や誤作動を防ぐため、制御盤の設計では、熱対策も重要です。ここでは熱対策をする理由と対策方法について説明します。

制御盤に熱対策をする理由

一般的に、制御盤の使用温度は50℃以下とされています。制御盤の内部温度が高くなりすぎると、部品の寿命を縮めると同時に、誤動作やトラブルの原因になります。温度上昇は制御盤の信頼性低下だけでなく、メンテナンスコストやダウンタイムの増加にもつながるため、設計段階から熱対策を考慮することが大切です。

設計段階で熱対策を施すには

制御盤設計時、CAD上で部品発熱量を可視化し、最適な冷却機器や通気経路を検討することで、設計効率の向上や手戻り防止につながります。3D電気設計ツールなどを活用して、より精密な熱対策が可能です。

参考:3D電気設計なら熱量の多い部品やクーラーの気流を可視化!設計段階で制御盤の熱対策ができる 電気設計CAD EPLANの機能|Eplanブログ

制御盤キャビネットの熱計算や冷却機器の選定については、以下の記事もご参照ください。

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設計・製造の無駄を削減 ~制御盤でのEplan連携事例

従来の制御盤づくりでは、設計から製造まで個別最適で進められることが多く、データの連携不足や手作業による非効率が課題となっていました。Eplanを活用することで、これらの課題を解決し、設計から製造まで一貫したデジタル連携を実現する企業が増えています。ここでは、3D設計データを活用した取り組み事例をご紹介します。

IDECファクトリーソリューションズ

IDECファクトリーソリューションズでは、EplanのElectric P8とPro Panelを導入し、制御機器の外形図配置から穴加工図を自動作成できるシステムを構築しました。Pro Panel上での事前配線により、線長や接続経路の自動計算、干渉確認が可能となり、業務効率が大幅に向上。設計データを直接リタールに送信することで、加工・組立の指示・伝達時間を削減し、既製品筐体への穴加工時の品質も向上しました。

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東洋電制製作所

月産1200面の制御盤生産能力を持つ東洋電制製作所は、2017年に生産技術部門を立ち上げ、熟練者依存からの脱却を図りました。

電気設計と筐体構造設計の3DデータをEplanで統合し、電線加工の自動化・分業化を実現。全自動電線加工機の導入により、電線加工工程を大幅効率化しました。さらに顧客企業のDX支援パートナーとして、設計データの有効活用をサポートする新事業も展開しています。

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制御盤設計は奥が深い

制御盤とは何なのか、その設計の流れ、制御盤をセットする機器の例、制御盤の熱対策の重要性など、基礎的な知識をご紹介しました。制御盤をセットで使う機器はほかにも数多くあり、機器によっては設計の流れも変わってきます。ここでご紹介した内容はあくまでも一例です。

また、3D設計ツールを導入によって作業の効率化が図れることもポイントです。設計段階から熱対策を考えたい場合にも、3Dでの可視化は大いに役立ちます。

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制御盤DXをまとめた資料

制御盤を設計・製造する人々とその業界に焦点を絞り、制御盤の将来と、その設計・製造のDX、それを実現するために必要なことを解説した資料がダウンロードできます。

フォーム入力が必要なのですが、よかったらダウンロードしてみてください。

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参考: 制御盤とは何かが分かる-速習したい初心者のための制御盤入門 | ある電機屋のメモ帳

公開日:2020年11月6日
最終更新日:2025年7月25日