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2024/04/02
電気設計
2022年末のChatGPTの登場以来、人工知能(AI)は世界的な注目を集め、その応用範囲は急速に拡大しています。この技術革新の波は、産業オートメーションや電気工学の分野にも及び、設計プロセスのあり方を根本から変えようとしています。
この記事では、電気設計ソフトウェアのグローバルリーダーであるEplanのCEO、セバスチャン・ザイツの講演およびインタビューの内容を基に、AIが電気設計にもたらす変革の可能性と、その実現に向けた課題について解説します。
AIという言葉は1955年にアメリカの大学の研究プロジェクトで初めて使われましたが、その発展は一筋縄ではなかったです。理論モデルは古くから存在したものの、それを実行するためのハードウェアの計算能力が不足していたため、長らく大きな進展が見られませんでした。しかし、近年のクラウド技術の普及により、誰もが強力な計算能力にアクセスできるようになり、AIは再び飛躍的な進化を遂げました。この歴史は、AIの発展がソフトウェア(理論)とハードウェア(計算能力)の相互作用によって支えられてきたことを示しています。
AIはこれまでも、チェスや囲碁で人間に勝利するなど、その能力を示してきましたが、広く一般に浸透するには至りませんでした。この状況を劇的に変えたのが、2022年11月に公開されたChatGPTです。大規模言語モデルを基盤とするこの技術により、専門家でなくとも自然言語でAIと対話することが可能になり、AIは一気に社会の主流へと躍り出ました。
Eplanは、AIを産業分野、特に電気設計の現場で活用することに注力しています。AIを用いてエンジニアを反復作業から解放し、より創造的な業務に集中できる環境を構築するを目指しています。AIはまだ製品をゼロから創造する段階にはありませんが、手作業や繰り返し行われるタスクを自動化することで、設計プロセスを大幅に効率化できると期待されています。
Eplanが開発を進める具体的なAI活用事例として、以下の2点が挙げられます。
部品リストからの3Dレイアウト自動生成・・・顧客から提供された部品表(BOM)を基に、AIが制御盤の3Dレイアウトを自動で生成する機能です。AIが部品の寸法データをEplan Data Portalから取得し、適切な配置を提案するため、設計の初期段階にかかる時間を大幅に削減できます。
ハノーバーメッセ2025で発表した、Siemens社のPLC設計ツールなど、異なるシステム環境間での設計変更をAIが自律的に同期させるアプローチです。例えば、一方のシステムでPLCのハードウェアが変更されると、AIエージェントがその変更を検知し、もう一方のEplan上の回路図を自動で修正します。これにより、手作業による連携ミスを防ぎ、プロセス全体の効率を高めることができます。
こうしたアプローチにより近い将来にエンジニアリング時間を最大40%、5年後には最大90%削減できる可能性があると見込んでいます。
参考:最新情報!Eplan@ハノーファーメッセ 2025|Eplanブログ
ザイツ氏は、AIが真価を発揮するためには「標準化」が不可欠であると強調しています。AIが構造化された意味のある情報を学習するためには、ECLASSやアセット管理シェル(AAS)のような、デジタル世界で通用する共通言語(データ形式)の整備が前提となります。
標準化されたデータ基盤があって初めて、AIは能力を飛躍的に高めることができるのです。
しかし、忘れてはならない重要なことがあります。
それは、「良いソフトウェアは、良いプログラミングからではなく、良い要件定義から生まれる」ということです。AI自身が、顧客が本当に困っていることや、解決すべきビジネス上の課題を自発的に見つけ出すことはできないのです。
AIはコードを書くのを手伝ってくれますが、「何を解決すべきか」という根本的な問題を見つけ出すのは、まだ人間の仕事です。お客様の声に耳を傾け、本当に解決すべき問題は何かを考える。このプロセスこそが最も重要なのです。AIは私たちの問題を解決してくれますが、その「問題」を定義するのは、私たち人間なのです。
AI技術は、私たちの働き方を大きく変える可能性を秘めています。特に電気設計のような専門分野では、AIを賢く使うことで、エンジニアは単純作業から解放され、より付加価値の高い創造的な仕事に時間を使えるようになります。AIの進化はまだ始まったばかりです。
参考
【FAトップインタビュー】Eplan CEO セバスチャン・ザイツ氏が語る Eplanが見据える設計自動化の未来と 日本の製造業へのメッセージ|オートメーション新聞