電気設計の自動化はどのように進んでいる?その課題と可能性とは

なぜ電気設計の自動化は難しいと言われてきたのでしょうか。その理由を考えながら、メカ設計の自動化が進む中で、電気設計はどのような面からアプローチして自動化が進められているのか、自動化することでどのようなメリットがあるのかを解説します。

これからの電気設計は自動化が基本

電気設計に訪れている自動化という変化は、どのような経緯によってもたらされているのでしょうか。その背景から考えてみましょう。

進む設計の自動化

電気設計に限らず、設計アプリケーションは自動化が進んでいます。こういった進化の背景にあるのは、コンピューターの演算力向上と、シミュレーション技術の進歩です。特に3Dモデリングに関する描画や演算処理の進歩は目覚ましく、設計アプリケーションは視覚的に直感で操作できるものが多くなっています。

また、これまでは線を引いたりオブジェクトを配置したりする作業は、人が手動で行っていました。しかし近年では、いくつかの条件を指定すれば自動的に最適な配置や接続がされるように、設計アプリケーションは進化しています。

このように、設計アプリケーションを支える技術の向上によって、設計の自動化は急速な進歩を遂げているのです。

なぜ設計の自動化が必要なのか

こういった設計の自動化は、日本の産業が抱えている課題を解決する方法とも関係しています。

経済産業省が発行した「2018年版ものづくり白書」では、国内のものづくり産業が直面している課題として、人材不足の深刻化とデジタル革新への対応をあげています。これらの課題への対策になり得るとされているのが、デジタルツールの活用です。デジタルツールの活用により自動化・省人化を進めることで、人はより付加価値の高い仕事にシフトし、人材の活用・育成へとつながっていくとしています。

このデジタルツールには、自動化された設計アプリケーションももちろん含まれます。設計の自動化は人材不足の解消と新しい働き方を実現し、国内産業全体の生産性を向上する手段としても期待されているのです。

自動化は電気設計でも重要

では、電気設計においてはどのように自動化が進められてきたのでしょうか。

設計の自動化は、3Dモデリングの進化が中心となって進められてきました。このことからもわかる通り、設計をエレ・メカで分けて考えたとき、メカ設計が自動化に関しては先行しています。これは、エレ設計に対しメカ設計が常に優先されてきたことが影響していると考えられます。

開発の現場では、目で見える物理的・空間的なスペースや機械部分の設計が先に行われ、ソフトウェア的な電気系統の設計はその後に行われるという流れが一般的でした。そのため、エレ設計はメカ設計ありきで考えられる場合が多いのです。

しかし近年、産業機器にも電子化の波が訪れ、電気系統の重要度が占める割合が大きくなり、それとともにエレ設計も重要視されるようになっています。また、開発プロセスと設計アプリケーションの進化により、エレ・メカ設計を同時に進めることで開発を効率化する考えも広まりつつあります。

このように、技術の進化により開発の進め方に変化が訪れつつありますが、電気設計は自動化が難しいとされてきた分野でもあります。

設備の生産ライン設計では、熟練技術者が持つノウハウの共有化が進まず、後継の教育育成に偏りがあるのが現状です。また、過去に紙ベースで作業が標準化されてきたため、現場作業者はデジタルツールの必要性を感じていないという点が最も大きな障害となっていると考えられます。特に決定権を持つ層は、ノウハウの共有化とデジタル化にはあまり積極的ではありません。

作業の外注化が進んでいるのも、設計の自動化が浸透するのを難しくしている要因の一つです。特に制御盤製作の分野では大部分が外注化しており、実際の設計ノウハウは細分化された外注先が持っています。外注先となる企業では日々の業務に追われ新たな設計ツールを導入する余裕がなく、結果として現場レベルでの自動化は進んでいないのが現状です。

また、設備の電源系統設計では別の要因により設計自動化が困難となっています。大規模な設備の完成までには、数年単位での時間が必要となります。この間、電源系統に接続される電気機器の多様化と、電気機器の頻繁なラインナップ更新が繰り返されます。その結果、事例や設計パターンの数・種類が膨大となり、さらに更新対応が追いつかず作業量が肥大化しく悪循環に陥っているのです。

これらの理由により難しいとされてきた電気設計の自動化ですが、このままでは日本は世界に取り残されていくことになりかねません。分野を越えて電気設計自動化・デジタル化の重要性とそのメリットについて考えていく必要があり、電気設計業界も変革期を迎えているといえます。

電気設計を自動化するとどうなる?

では、電気設計の自動化によりどのような変化がもたらされるのでしょうか。

課題の多い電気設計の自動化に対し、設計作業そのものだけでなく関連作業も含めて自動化することで、設計の効率化は進んでいます。

今の電気設計アプリケーションができること

電気設計の自動化によるメリットを考える前に、最新の電気設計アプリケーションではどのようなことができるのかを確認します。電気設計アプリケーションは、次のような機能によって設計自動化が進んでいます。

  • 回路の自動生成 機器や接続点などのシンボルを配置すると、自動で配線が接続され、移動や削除をすると配線接続も自動で変更されます。また、回路パターンを設定すれば、使用する機器を選択するだけで回路図全体が自動生成されます。
  • 部品表を含むさまざまな帳票の自動作成 複数の産業機器や制御盤が配置される設備では、部品表(BOM)の作成に膨大な情報量が必要となり、その作成にも多くの時間と手間がかかります。こういった部品表やケーブルリスト、ドキュメント類などの帳票も、回路図が自動生成されるのと同時に自動作成されます。
  • 図面の修正を関連図面に自動反映 図面の一部を修正した際、関連図面や関連帳票の該当箇所を修正するのはとても時間のかかる作業です。また、修正漏れや不整合があればその後の作業に支障をきたします。

こういった修正に関しても、一部を修正すると関連図面・関連帳票の該当箇所に修正が自動反映されるようになっています。

電気設計の自動化によるメリット

このように電気設計アプリケーションは進化し作業の自動化を実現しています。こういった自動化により、設計現場ではどのようなメリットが得られるのでしょうか。

  • 標準化
    アプリケーションにより自動で設計が行われるということは、設計作業者によってバラツキの合った設計手法が統一されるということも意味します。これにより設計が標準化され、その後の機器配置や配線作業の標準化へもつながっていきます。
  • 修正漏れ防止
    自動化されることで修正漏れが防止できるだけでなく、修正漏れの確認作業に要していた時間も削減できます。
  • 効率的な流用
    完成した設計図だけでなく登録した設計パターンを蓄積していくことで、条件や環境が変わっても設計パターンをベースとした効率的な設計が可能です。
  • 作業時間短縮
    回路の自動生成、帳票の自動作成、修正の自動反映は、いずれも設計作業時間を大幅に短縮させます。
  • 人為的ミス防止
    アプリケーションによる自動設計は、人による作業を削減し、人為的ミスの防止につながります。
  • 手戻りの防止
    手戻りの原因となっていた修正漏れや人為的ミスによる不整合がなくなり、設計作業のフローが整流化されます。

これらのメリットが得られることで、熟練設計者がより付加価値の高い仕事に専念することができ、経営資源の有効活用にもつながっていきます。

電気設計の自動化はますます進化していく

電気設計の自動化について、現状の課題と期待される効果、自動化によって設計現場が得られるメリットを解説しました。

今後、さらに電気設計が重要視されるようになり、それと同時に設計の自動化も進んでいくと考えられます。特に、3Dモデリングを使った空間と電気を同時に考える設計手法が中心になっていくと予測できます。また、AIにより最適化された設計案が生み出されるようになるかもしれません。これからも電気設計は進化を続けていくでしょう。

参考:

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