電気設計の標準化はすべてを標準化する事ではない。「設計の2階層化」とは?

電気設計は標準化が難しいといわれる業務です。それにはどのような理由があるのでしょうか。電気設計において標準化が進みにくい理由と、標準化することで得られるメリット、そのための要件を考えます。

設計の標準化はなぜ難しいのか

電気設計に限らず、設計という業務分野は、全般的に標準化が難しいといわれています。なぜ設計は標準化が難しいのでしょうか。その理由としては次のようなことが考えられます。

ボトムアップからの理由

最初に、企業における設計現場で起こっている設計者の意識の問題があります。それによって設計の標準化が妨げられていることを考えます。

設計は、ものづくりのなかでもクリエイティブな仕事と位置付けられることの多い業務です。設計者のセンスに従って、独自のデザインを盛り込みたいという気持ちを持つ人も多いのではないでしょうか。機械設計では物理的、視覚的な面での独自性は必ず求められる要素です。また、電気設計においても配線ルート決定やコントロールパネルの配置は設計者のセンスが求められると言われることの多い部分です。設計の標準化を進めることで、こういった独自性が失われてしまうのではないという懸念があります。新たな取り組みや斬新なアイデアといった発想の芽を摘んでしまうのではないかという心配です。

このような理由から設計の現場では、設計に個性を出したいという属人化を歓迎し、標準化を歓迎しない風潮があるのです。

また、人手不足により特定の設計者のみに業務が集中し、その設計者の癖ややり方が強く出すぎてしまっていたり、その設計者にしかわからない業務ばかりになってしまっていたりと、いつの間にか属人化が進んでいるパターンもあります。こういった場合は、標準化へ方向転換するための時間的余裕も人的余裕もありません。

トップダウンからの理由

一方トップダウンからの理由としては、現場の実情や現場側への配慮によって標準化が進みづらいことが考えられます。

ひとつに、設計の現場が忙しくて標準化についての方策を検討する時間を取ることができずにいるケースがあります。また、現場があまり協力的ではないといった理由で標準化を推し進めることができずにいる例も、現場優先主義の企業ではよく見られます。

このほか、今の手法が標準化されていないということは分かっているものの、何から始めていいか、どこから手を付けていいかが分からないといったこともあるようです。

こういった、経営者側や部門のトップ側が決断できずに、標準化に着手することを躊躇してしまっているパターンも多く、設計業界の標準化が進まない一因となっています。

電気設計を標準化するメリット

では次に、設計、特に電気設計を標準化することによって得られるメリットを考えてみましょう。

  • 仕事量の平準化 設計は、その作業に慣れている人、手順を知っている人の受け持ちが増え、仕事量が大きく偏ってしまいがちです。設計作業が標準化されることで、新人等の知識が浅い人でも手順を知り、均等で安定した仕事量の配分へと近づけることができます。

  • 品質の安定 標準化により、その人でなければできないという状態が解消されると同時に、設計の基本的な手順も統一されます。これにより、担当者や手順の違いによる品質のばらつきが抑えられます。 

  • 効率的な流用化 設計部品表や過去の設計図の流用は、効率化につながっている場合とそうでない場合があります。異なる環境で行われた設計は、流用しようとすると手直しが必要になったり、不整合が起きたりする可能性もあります。デジタルでのリサイクル可能な標準化により設計環境も整備されますので、蓄積した過去の財産を効率的に流用できるようになります。

  • 工数削減 過去の設計図や部品表をスムーズに流用できるようになることで、設計作業の工数削減につながります。

  • 教育時間の短縮 標準化によって、手順書やマニュアルが整備され、手順や作業方法も共有されます。これにより業務の進め方、ノウハウの継承がしやすくなり、教育時間が短縮されます。但し、基本的な設計思想などの教育はきちんとしておかないと設計者は育たないので、きちんとした教育体系も必要になります。

  • 納期短縮 品質の安定、工数の削減、教育時間の短縮などにより納期の短縮が可能となります。

電気設計を標準化するための要件とは

前述のように、電気設計を標準化することで得られるメリットはさまざまにあります。では、難しいといわれる設計の標準化を成功させるためには、どのようなプロセス、またはアプリケーションが必要なのでしょうか。

その鍵となるのが「設計の2階層化」です。

1階層目はこれまでの設計を流用しながら基本的な部分を共通化して土台を固める、すなわち「設計資産の標準化」をベースとした層です。この階層では、標準化された効率的な設計を行うため、できる限り手作業を減らし、自動化できる部分を増やすことが重要となります。自動化が進むということは、共通の作業方法がとられることと近い意味を持つからです。

こういった1階層を整えるためのアプリケーションとしては、設計を自動化できるものが非常に有効です。データベースに過去の設計資産が蓄積されていたり、視認性の高い設計が可能であったりすれば、過去の設計の流用や教育もスムーズにすることができます。これは、設計資産の棚卸と呼ばれるやり方であり、設計の効率化を図るために最も重要なことです。

2階層目は、1階層の上に独創性や斬新なアイデアをのせて設計の進化を図る層です。

このとき、「標準化の上には独創性は生まれない」「一から新たなものを作らなければ設計は進化しない」と考える人もいるかもしれません。しかし、流用の上に独創性を乗せることは決して不可能ではありません。

例えばブロックを使って何かを形作るとき、自由な発想で組み立てたものは間違いなく独創性を発揮します。ブロックというすでに成形されたものをベースに独創的なものを作り上げるのです。同様に、これまでの設計を組み立てて新たなものを作ることは十分に可能であり、それによって次につながる新しいアイデアが生まれることも期待できます。

このように、1階層目は標準化をベースとして業務を遂行する層と考え、設計の効率化を図ります。2階層目は、1階層目の効率化によって生じた空き時間を有効に使いながら、価値の高い設計作業をする層と考えます。

こうして層を分けて設計を考えることで、標準化と独創性を両立していくことが可能になるのです。

標準化から生まれる新たな電気設計のあり方

設計の標準化が難しいといわれる理由と、それを成功させるために必要なプロセスやアプリケーションをご紹介しました。

標準化が難しいといわれることの多い設計業務ですが、標準化することで得られるメリットは、これからの時代に必要なものばかりです。標準化に有効なアプリケーションを活用するなどして2階層目の設計を充実させ、独創性を保ちながら標準化を進めていきましょう。

参考:

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