
IEC規格とは?JIS規格、ISO規格との違い
2024/04/02
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回路図用記号に関するJIS改訂から20年以上が経ち、新JISでの表記が浸透したかに思えます。現在はIECの内容を考慮した新JISで設計するのが主流ですが、未だ国内には旧JIS表記と新JIS表記が混在している状態です。
なぜ未だに旧JISが使われているのでしょうか。理由を考えてみました。
まずは旧JISと新JISの違いですが、
JISとは、日本産業規格の略称であり、工業製品の生産や流通、消費を円滑にするために制定された統一規格です。
元々は日本の工業標準化法に基づいて作られた国内規格でしたが、国際標準化機構ISOに合わせるために改訂され、その過程でJISも改正されました。
そのため、ISOが改訂されるとJISも改正され、新しい版を新JISとして区別するようになりました。このようにして、旧JISと新JISが生まれることになりました。
本来であれば最新の新JISに基づいた設計が行われなければいけません。しかし、電気設計で課題を抱えているお客様を話していると、未だに旧JISを使用している会社が多いことに気づきました。代表的な理由としてよく挙げられるのが、
などです。現在製造されている製品でも、設計は過去に行われているものが少なくありません。当然それらの設計関連資料は、当時のJISに基づき作成されたものです。その後JISが改正されても、わざわざ新JISにのっとって作成し直すことはほぼありません。
本来であればJISが改正された時点で資料も改正されるべきかもしれませんが、そこまで作業が行き届かないのが現状です。
その結果、旧JISで作成された古い資料はそのまま使用され、今も旧JISが使われ続ける状況になっているのです。特に、旧JISに慣れ親しんだ層は旧JIS記号に依存する傾向があります。
また、過去の設計資産を活用して、新しい設計を行うことも多いので、昔から使っている旧JISシンボルを続けて使用しています。
規格の企画Ⅱ IEC・NFPA・旧JIS シンボル比較 より抜粋
では、IECとは何なのでしょうか?
IECとはInternational Electrotechnical Commisionの略称であり、日本語では国際電気標準会議と言います。
前述のISOはさまざまな製品や分野の規格を作成するために組織された国際標準化機関ですが、電気・電子分野は対象から除かれています。
一方IECは電気や電子、またはその関連分野についての規格を作成するために組織された国際標準化機関になります。日本を含む多くの国が参加しており、そのため海外における電気設計は、IECに準拠しなくてはなりません。
一方で日本国内の製品においてはJISを準拠しなくてはいけません。新JISには先にもご紹介したとおりISOに基づいた改正がされており、合わせて電気や電子の分野においてはIECも考慮された改正がなされています。そのため、新JISに準拠した設計をすれば、結果としてIECにも準拠した設計となるのです。
旧JISの回路記号は日本の方言と言える独自の規格が含まれるため、海外のエンジニアには理解しにくく、海外に売り込むには不利な要素となってしまいます。
現在は市場のグローバル化が進み、製品を世界中で販売する可能性が高い。設計段階から積極的にグローバル化に対応して、どの国でも使えるような回路図で設計し、海外市場でも受け入れられやすくすることが重要です。グローバル対応だけでなく、国内でも新しい協力会社と業務を開始した場合、新しい設計者が入ってきた場合でも同じことが言えます。
規格の企画Ⅱ IEC・NFPA・旧JIS シンボル比較 より抜粋
新JISに基づいた設計であれば、IECの改正が考慮されているので問題ありません。ただし旧JISに基づいた設計であれば、IECの改正が考慮されていないので注意が必要です。
以前はJIS C0301が使われ、日本独自の電気シンボルが使われていました。
しかし現在ではIEC60617第2版の同一規格として「JIS C0617 電気用図記号」が制定されています。このJIS C0617が新JISとして使われ、IECで定められた電気シンボルが日本国内における電気シンボルとしても定義されているのです。
旧JISと新JISで異なる電気シンボルは多いので、その中でコイルについて紹介します。
コイルも種類により記号が分けられていましたが、新JISではブレーカー同様統一されています。その他にもヒューズは開放形と包装形で定義されていたものが、新JISでは一つの電気シンボルとしてまとめられています。旧JISと新JISでは電気シンボルに多くの差があります。この差をしっかりと把握する必要があります。
下記参考の記事ではシンボルについてもう少し詳しく例を挙げています。
日本国内の企業では、今まで旧JISを使い続けていたことから、新設計においても旧JISを使うケースが見られます。
電気回路図は関係者が情報共有をするための資料なので、旧JISを理解している日本国内の企業と仕事をするのであれば問題ないでしょう。しかし、近年は海外案件が増加しており、日本国外の企業とやり取りすることも増えています。
これから作る資料に関しては、IECの内容が盛り込まれた新JISで書くことを一度考えてみてはいかがでしょうか。
Eplanは、IEC,NFPAなど規格に準拠した電気シンボルをデフォルトで提供しています。
設計の標準化をしようと考えた時、いろいろやり方はありますが一つポイントになるのが
「国際規格に沿った標準化」だとEPLANは考えます。
この考えから、規格の企画シリーズとして2つお役立ち資料を作りました。
IEC(新JIS)と旧JISとNFPAの比較では、いくつかのシンボル取り上げて、IEC(新JIS)と旧JISとNFPAの比較をしました。
参考:
公開日:2019年5月21日
最終更新日:2024年4月2日