電気用図記号の旧JISと新JIS-切り替えのメリットと必要性

電気用図記号の旧JISと新JIS-切り替えのメリットと必要性

電気用図記号について、取引先から新JISへの統一を要求されたときや、
社内で新JISに統一しようという動きが出始めたとき、どのような対応が必要でしょうか。
旧JISと新JISの違いと、移行の必要性を考えます。

旧JIS・新JISとは

古くからある産業分野において規格や標準化に取り組む企業では、
旧JIS・新JISという言葉が使われることがあります。
これらはどういった意味で、どのようなときに使われるのでしょうか。

旧JISと新JISの違い

日本産業規格(JIS)は、さまざま産業によって生み出されるもの、または産業に関わるものについて定められた規格です。
以前は日本工業規格と呼ばれていましたが、2019年7月に法改正され呼称も改められました。
では、旧JIS・新JISはこの改称の前後を指しているのかというと、そこは関係がありません。

JISは規定する内容によって細分化され定義されていますが、内容に不整合や不適合があれば、随時改訂されます。
このとき、改訂される前のJIS規格と改訂後のJIS規格を、旧JIS・新JISと呼んでいるのです。

よって、「これが新JIS」といった特定の規格を指すものではなく、
その産業分野において大きな影響があるような改訂が行われたときに、その前後を指してそう呼ばれるのです。

JISが改訂される理由

では、JISはどのようなときにどういった目的で改訂されるのでしょうか。

JISの調査・審議機関であるJISCは、終戦間もない1946年に発足しました。
戦争によって極度に落ち込んだ日本の生産力と技術力を取り戻し、世界の技術強国と肩を並べられるよう標準化に取り組むことを目的とした機関です。
1949年には工業標準化法が制定され、これにのっとり国家規格であるJISが生み出されるようになりました。

こうして多くの分野について規格を定めたJISは、
戦後の日本の復興とともに歩んできた、日本の産業発展の取扱説明書とも言える存在です。
しかし、長い年月の中では、その規格が適用される分野を取り巻く環境にも変化が訪れます。
新技術の登場によって一般的な製造方法が変わったり、グローバルな流通の促進によって国際規格との整合化が必要になったりといった変化です。

標準を定義する規格は、こうした環境の変化に合わせて実際の使用に則したものになっていなければなりません。そのため、環境に適合した内容へと改定していく必要があります。また、より明確な表現に変更することでわかりやすくする目的で改定されることもあります。

例えば、洗濯表示についてのJISが近年改訂されたことが広く知られています。

衣服や布団、じゅうたんなどの繊維製品には、洗濯処理の方法を表す洗濯ラベルが取り付けられていますが、この表示方法についての規格が改訂されました。

改定前のJISでは「40℃で洗濯が良い」ということを表す「指示(推奨)表示」でしたが、
改訂後は「40℃以下なら損傷を起こさない」という「限度表示」へと変更になりました。
また、表示の記号についても、改定前は昭和の家庭に普及したダイヤルタイマー式の洗濯機のイラストをベースとしたものでした。
改訂後は水の温度を表していることがわかりやすいものへと変わりました。

この、洗濯表示に関するJISも、改訂を境に旧JIS・新JISと呼ばれています。

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参考:消費者庁 新しい洗濯表示 説明資料 こどもむけより抜粋

電気に関する旧JISと新JIS

電気に関して旧JIS・新JISという場合は、主に電気用図記号についての規格が改訂され、使用する記号が変更したことを指します。
国際規格(IEC)に整合化するために改訂が行われました。
それまでのJIS C 0301が廃止され、JIS C 0617が制定されています。

旧JISから新JISへと、変更された電気用図記号には次のようなものがあります。

ヒューズ.pngコイル.png

      ヒューズ                             コイル            

新JISの電気用図記号については、こちらの記事でもご紹介しましたので合わせてお読みください。
参考:国際標準規格に準拠した新しい回路記号でグローバルな設計を行おう|EPLANブログ

回路図の電気シンボルの旧JISから新JISへの切り替え

回路図用記号に関するJIS改訂は1997年と2000年の2段階で行われ、すでに新JISでの表記が浸透したかに思えます。
しかし、未だ国内には旧JIS表記と新JIS表記が混在している状態です。
特に、旧JISに慣れ親しんだ層は旧JIS記号に依存する傾向があります。

電気用図記号は人から人へと情報を伝達するためのものです。電気回路内でどのような部品がどのように接続されて動いているのかを表す、重要な役割を持っています。その点を考慮し、旧JISに慣れ親しんだ層にも伝わるよう配慮して旧JIS・新JISを併記する方法を取っている場合もあります。

また、多くの公的資料や出版物が新JISでの表記になっている一方で、文部科学省の検定教科書や国家試験の工学試験問題において2013年まで旧JIS記号が使われていた例もあります。このように旧JISから新JISへの移行は早急に進んだとは言えない状況です。

しかし、現在販売されている機器のカタログや解説書、電気設計アプリケーションでは、基本として新JISの電気用図記号が使われています。旧JISの記号を使い続けている場合、取引先企業から新JISの使用を求められることも考えられます。求められてからの対応では、短期間で膨大な作業が必要になる可能性があります。平常運転時に計画的な旧JISから新JISへの移行を検討しておきましょう。

新JISに統一することで得られるメリットをまとめると、次のようになります。

  • 社内での表記統
    一 社内での情報共有化・標準化が徹底されることで無駄がなくなり生産性が向上します。
  • 取引先との表記統
    一 多くの企業が新JISを使っています。新JISでの表記にすることで企業間の表記も統一できます。
  • 国際標準に準拠
    新JISは国際標準規格IECに合わせて規定されています。新JISを使用することで国際標準にも準拠することになります。
  • 不必要な貿易障害の減少
    国際標準に準拠することで、海外での取引時にトラブル発生を避けられます。

これらのメリットを理解しておけば、移行作業の計画も立てやすくなります。

参考:【規格の企画】IEC・新JISに対応した 電気設計の標準化をするために 知っておくべき概念

新JISへの移行は必要性の理解から

電気業においての旧JIS・新JISと、新JISへの移行のメリットをご紹介しました。

国内では、今でも旧JISの電気用図記号が用いられた図面が使われることがあります。
しかし、それにより記号の変換や修正など、本来必要のない作業が発生している場面もあります。これは、旧JISを使用することで生まれている現在の損失と、今後生まれる可能性がある損失を把握できていないことが原因として挙げられます。

新JISへの移行は、経営者や管理職がその必要性を理解し、社内教育や研修によって足並みをそろえて進めていかなければ達成が困難になります。

参考:

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