IEC規格とは?JIS規格、ISO規格との違い
2024/04/02
トレンド
「設計・製造DXを導入すると業務が楽になり、人手不足にも対応できる」
制御盤の設計製造を行っている方の中には、そんな触れ込みを聞く機会も多くあるのではないでしょうか。しかしDXの検討をする前に、DXの効果を最大限に発揮するための「電気設計のデジタライゼーション」は完了しているでしょうか。今回はDX導入に関する重要な前段工程となる電気設計のデジタライゼーションについて説明します。
製造業を取り巻く環境は、以前とは比べ物にならないほど速いスピードで変化しています。少子高齢化による人口減少は人手不足の状況をゆっくりと進行させてきました。そのため、まだ人手不足は先の問題と考えている経営者も多かったです。しかし、新型コロナウイルスによる労働環境の変化により、そんな悠長なことを言っていられない状況に追い込まれました。
都市部では密状態を回避するために在宅勤務が推奨され、遠方との打ち合わせなどはリモートによるものに変わりました。これらの業務効率化は、コロナ禍により半ば強制的に推し進められることになったのです。
新型コロナウイルスによる社会変化は、コロナ禍が長期化することで定着していき、終息後も以前のような状況には戻らないだろうという見方もでています。
遠方の人と現地に行かなくても会議ができるリモート会議は、インターネットやパソコンなどのデジタル機器があるからこそできる業務効率化です。デジタライゼーションとは、このリモート会議の例のように、今までアナログな方法で行っていたことをデジタルに変えることを指します。
今まで手書きだった図面作成をCAD化するなどの今までのデジタル化は、「デジタイゼーション」と呼ばれ、「デジタライゼーション」と区別されます。設計・製造DXにはデジタライゼーションもデジタイゼーションも必要となるものです。
さまざまな機器が自動化される昨今、その制御を行う制御盤はより高度な制御内容を搭載することになるでしょう。高度な制御盤の需要は、増える一方であると予想されます。
しかし、多くの制御盤製造メーカーは従業員100人以下の中小企業です。常に人手不足の状況にある会社も多いでしょうが、今後、業務効率化や職場環境の改善を行っていかなければ、より深刻な人手不足に陥ってしまう危険性があります。
過去図面のデータベース化や部品表の自動作成、製造部門では製造マニュアルのデータベース化など、より高度な業務の自動化を進めることで、設計者や製造者個人の負担を減らし、職場環境の改善を行う必要があるでしょう。今まで通常業務で忙殺されていた優秀な設計者の時間的余剰を作ることで、より高度で難易度の高い業務に注力することができるようになれば、市場に潜在する需要も掘り起こしていくことができるようになります。
制御盤製造のDXによる進むべき姿は、前述のような高度なものとなります。では、現在の一般的な電気設計ではどこまででてきているのでしょうか。
現在の電気設計ではCADが一般的に使用されています。CADからPDFへ変換してメール送信など、すべてデジタル化がされているように見えます。
しかし、実はそれらはすべて設計だけの話となっていることも多いです。例えば製造部門が設計部門からメールで送られてきた図面をわざわざ印刷して使うなどといったケースがあります。このように一部ではデジタル化されていても、結局部署ごとに分断されていることがあるのです。
電気設計でのデジタイゼーションは、手書き図面のCAD化やふるい図面のスキャンによるPDF化など、一般的に「デジタル化」といわれてイメージするようなものを指します。電気設計のデジタイゼーションは、どの制御盤製造メーカーでもほぼ導入完了しています。
デジタイゼーションは普及していますが、デジタライゼーションはまだまだ普及しているとはいえません。
電気設計のデジタライゼーションには、設計図面から部品表の自動作成、製造部門からのフィードバックなどが同じ図面空間で行われるような、共通のフィールドを作る必要があります。ここまでデジタル化を進めてこそ、デジタライゼーションができたといえるでしょう。
しかし実際には、デジタライゼーションまでできている制御盤製造メーカーは少ないのではないでしょうか。
設計部門と製造部門では、同じ会社であってもお互いに意識の隔たりがあることも多く、協力して効率化をするということが少ないのが現状でした。実際、設計に対しても製造しやすい形に製造部門がマイナーチェンジをしても、それが以降の制御盤に反映されていないなど、設計部門と製造部門の連携不足は多く見聞きします。しかし仮に、製造部門と設計部門で共通のデータベースを使用できれば、こうしたことは起こりにくくなるでしょう。
このように無駄を取り除いて過去の経験を生かすためには、設計、製造それぞれの知見を記録しておく共通のフィールドがデジタル空間に必要となります。デジタライゼーションとは、その空間を作ることであり、その内容を用いて新たな自動化や効率化を行うことをDXなのです。デジタライゼーションやDXを実現するには、設計、製造の垣根を超えた共通データとアクセス空間が必要です。それぞれの専門家が協力し、それが実現できれば、大きな可能性が開けてくるでしょう。