兵庫県姫路市に本社を構える盤メーカー・アイベステクノは、グループ全体で国内4工場を含む全国7拠点、海外2拠点を展開し、社員数は400人超、ひと月当たりの生産面数は300面を誇る、国内屈指の大手制御盤メーカーです。2023年に創業50周年を迎え、次の50年、そして100年企業の実現に向けた新たなチャレンジを開始しました。それが、UL盤をはじめとする海外向け盤への本格的な取り組みです。
顧客である日本の大手機械メーカーが海外事業を強化するなか、それを制御盤メーカーとして支え、顧客とともに事業を拡大していくための新たな挑戦として、設計・製造プラットフォームにEplanを採用しました。さらに、制御盤にUL認証ラベルを貼ることもできるようになり、設計・製造の仕組みをグローバルスタンダードに合わせて整備しました。これらの取り組みについて、代表取締役の梅田晶久氏ほかに話を聞きました。
自宅の2階の創業から50年で国内屈指の盤メーカーへ成長
―御社の概要、沿革について教えてください。
当社は、1973年の創業で、兵庫県姫路市に本社があり、当地と埼玉県入間市、愛知県知多郡阿久比町に工場があり、それ以外に国内4拠点、海外のタイとベトナムに2拠点を構え、グループ全体で420人が働いています。高圧から低圧、公共から民生まで、インフラやプラント、工場、生産設備向けなどあらゆる盤に対応でき、オーダーメイドやカスタムを得意としています。
ひと月当たりワイド800㎜盤換算で300面の生産能力があり、設計から調達、製造、アフターフォローまで自社で一貫して対応できる体制を整えています。
―社員数400人超、月産300面とはすごい規模ですね。
特徴的なのが、全社員420人のうち、約半数がハ ード・ソフト設計やCADオペレータなど設計に携わる技術職だということです。制御盤設計だけでなく、国内外の主要メーカーのPLCの制御プログラム設計、DCSやSCADAなど集中管理システム開発設計など上位・下位問わずにシステム開発もできます。
CADを扱う部署はほぼ女性社員で構成しており、設計部門で多くの女性が活躍している点もユニ ークだと思います。もともとは電機メーカーの設計職だった創業者が独立して立ち上げた会社で、当初は自宅の2階にドラフターを置いて図面を書き、その修正やトレースを家族や近所の主婦の方々に内職で手伝ってもらっていたそうです。その頃から女性を戦力化し、働きやすい業務や組織づくりが行われており、そのことが今も生きています。
また社員が子どもを預けて働けるように近所に企業主導型保育所を開設するなど、女性が地元で働きやすい環境づくりを続けています。
次の成長の柱として海外向け制御盤に注目
―早くからそうした環境整備を進めてきたからこそ、ここまでの規模まで成長できたということですね。
おかげさまで2023年に創業50周年という節目を迎えることができました。近年の受注環境も堅調で、それに対応するため、21年には姫路工場の拡張や日成電機製作所の子会社化といった大規模な投資を行うなど生産能力を強化してきました。
しかしその一方で、お客さまの要望やニーズが多様化し、従来の当社のやり方では対応できないケースも少しずつ見られるようになってきました。特に当社はこれまでは国内向けの盤をオーダーメイドで丁寧に作るということを強みとしてきましたが、お客さまの中には事業成長に向けて海外に軸足をシフトしているところも増え、国内向け盤は従来通り当社に発注し、海外向け盤は他社や現地の盤メーカーに依頼するといったことも出てきていました。また新規のお客さまから海外向け盤を作れないか、とい った問い合わせをいただくことも増えていました。
そうした中、創業50年から次の100年企業の実現に向けて物事を考えたとき、これまでの国内市場だけにフォーカスするのではなく、海外市場も見据えた事業計画を推し進める必要があると考えました。
24年にEplan導入 若手を中心に専門チーム結成
―そこで着目したのが海外向けの制御盤であり、グローバルに強いEplanだった訳ですね。
そうです。あるグローバル大手の産業機械メーカ ーから、海外向けの制御盤をEplanデータで作ってくれないか、という依頼が来たのがEplan導入のきっかけです。以前からEplanは知っていましたが、既に従来のやり方でしっかりした土台ができていたので、これまではあまり必要性を感じていませんでした。
しかし実際に具体的な案件が来て、お客さまも大変お困りだったこともあり、中長期の海外展開と標準化を見据えて本導入を決断し、24年10~11月にかけてライセンス導入と体制整備を一気に進めました。その案件は非常に短納期で完了させなければならかったため、まずは必要最小限の構成でEplanを動かし、並行してテンプレートや部品データベースの整備を進めました。
国際規格との整合や設計データの再利用性といったEplanならではの基盤づくりも、この案件をきっかけに本格的に着手でき、以降の案件に生かせる体制が整い始めました。無事完了し、いったんはそれで終了と思っていましたが、他のお客さまからも同様の相談が相次ぎ、海外向け案件が明らかに増えていく兆しが見えてきました。
さらに、Eplanは国際規格への適合性が高く、海外展開を視野に入れる当社にとって今後の標準ツールになり得ると判断し、社内でも若い社員を中心としたEplanチームを作って引き続き取り組むことにしました。
―若手中心とは思い切りましたね。
長年、設計業務に携わってきたベテランは、従来の電気CADを使いこなし、そのやり方に慣れていて、とても効率よく仕事ができています。それを突然、別のツールを使うとなると違和感がありますし、慣れるまでに時間もかかり、本人にとっても酷な話です。ならばむしろCADの経験がないぐらいの人材が良いのではないか、と思いました。
若手社員は、新しい技術をスポンジのように吸収し、チャレンジに対して前向きでやる気もあります。
Eplanは当社としても初めての導入であり、これからを担う優秀な若い力に会社の新しい挑戦を託してみようということで踏み切りました。
描くから「情報で設計する」へ サポート伴走で短期間での立ち上げに成功
―実際、Eplanを使ってみてどうでしたか?これまでの電気CADとの違いなど。
■Eplan設計チーム若山氏
初めは戸惑いしかありませんでした。Eplanでは、これまで使っていた電気CADの「線を引いて図面を描く」という感覚が通用しなかったのです。 Eplanは「正しく情報をそろえてデータベースを構築する」という感覚で、今はもう慣れましたが、最初はその違いにとても驚きました。

参考:Electric P8 回路図
特に最初のプロジェクトでは、工期が迫るなか、テンプレートや部品データの整備を進めつつ、 Eplanで設計。Eplanのテクニカルサポートの伴走を受けながらプロジェクトを進めていきました。今は、同じ部品なら接続や表記がそろう、部品配置で論理接続が効く、配線リストやチェックが自動とい ったデータ駆動のメリットも体感しています。
片手間にやるのではなく、専任でEplanにどっぷりと漬かれたことが、うまく立ち上げられた要因だ ったと思います。実際にはEplanを導入してまだ1年少々なので、今後順調に進めていくにはさらに研鑽が必要ですね。

■技術営業本部第1技術営業部部長永井氏
Eplanに興味を持って導入したものの、うまく立ち上がらない企業もあると聞きます。日本のやり方、日本のCADに慣れた人だとEplanのフォームや書式の違いといった細かな部分の違いが目に付き、その本質を見るまでに至らず、結局立ち上がらなくなってしまう。
それに対して若い人たちは、そうした違いも気にせず、どんどん使って慣れていきます。たとえ経験が浅かったとしても、やる気のある若手にまかせたのは成功だと思いました。
海外向け盤事業のもう一つの武器「UL 508A 認証制御盤メーカー」
海外仕様の設計から製造を国内で完結できる受け皿を整備
―海外向け制御盤事業の強化に向け、UL 508A認証制御盤メーカーとしても進化を続けているのですよね。
海外向け制御盤の事業拡大に向けて、UL(北米安全規格)に対応した制御盤を作れるUL 508A 認定を取得しました。こちらも若手から中堅メンバーが中心となって進めてくれたのですが、実務と並行してのMTR 認定トレーニングは並大抵のことではありませんでした。
しかし、彼らによるUL 508A 認定とグローバルで広く使われているEplanの導入という両輪がそろったことで、海外仕様の設計から製造までを当社内で完結できる体制が整いました。これが評価され、既存のお客さまや新規のお客さまから海外案件の相談が増加しています。
UL 508A 認定も、海外向け制御盤事業の強化を見据えたものです。Eplan導入と同じような流れで、あるお客さまからプラント向けのUL対応制御盤を作ってほしいという依頼があったのがきっかけです。海外仕様の制御盤を国内で完結できるように、 UL認定工場となることを決め、25年11月に晴れてUL 508A 認定を受け、ULListed ラベル付き制御盤が作れるようになりました。
国内向け盤メーカーから世界対応可能な盤メーカーへ
―今後に向けて。
これまでの50年は盤メーカーとして国内のインフラや産業を支える役目を担い、国内のお客さまから国内向けの案件をいただき、それを土台として成長してきました。
次の50年、100年企業を目指して成長を続けるためには、これまでとは違う、新しい収益の柱が必要で、それが海外向けの制御盤事業だと考えています。今回、Eplanを使った制御盤の設計・製造に対応し、UL 508A認証制御盤メーカーにな ったことで、海外規格を前提にした設計から製造を一気通貫で引き受けられるようになりました。それを知った方からの新しい相談が着実に増えていますし、さらに加速していけるよう提案を強化していきます。
Eplanについては、今ははじまったばかりであり、どのタイミングでアクセルを踏むか検討しているところです。人材育成や運用拡大のタイミングを見極めながら体制を段階的に強化していきます。
将来的には、設計から調達、製造、保守・メンテナンスまで全ての工程をEplanのデータでつなぎ、国内外の案件に対して、より高い生産性と品質で応えられる体制の確立を目指しています。