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120mの風力発電タワーに敷設され、ナセル内の制御盤に直接接続されているワイヤーハーネスの長さを、コンピュータで正確に決めることができます。世界第5位の風力タービンメーカーであるNordex社は、EPLAN Pro Panel,EPLAN Smart Wiring, EPLAN Harness proDを使い、ワイヤーのルーティングやハーネス設計に活用しています。
ドイツでは風力発電機だけで約50GWの出力があり、Nordexグループのタービンは重要な役割を果たしています。同社は世界の5大風力発電機メーカーのひとつです。2016年4月、Nordex社はスペインのAcciona Groupの風力発電部門と合併しました。新たに誕生したグループは、
現在、世界中で4,800人以上の従業員を抱え、2016年には約34億ユーロの売上を達成。これまでに21GWの出力のプラントを設置しています。
各シリーズ15~20のオプションを用意
Nordex社は、主に欧州で使用されているNordex製品群と、欧州以外の地域で需要のあるAcciona Windpower社のタービン群の2つをお客様に提供しています。Nordex社は、欧州市場ではオンショアの2.4~4.5MWのボリュームセグメントに注力しています。オプションとして、低風速、中風速、高風速、タワーの高さやローターの直径の違い、アンチアイシングシステム、状態監視、性能向上のための機能などが用意されています。
Nordex社の電気駆動・設計部門の責任者であるDr. Klaus Faltinは、次のように述べています。「私たちは、各シリーズに15~20のオプションを用意しています。さらに、グリッド接続など、地域ごとに異なる要件もあります。」
写真:風力発電機1台には最大500個のセンサーが搭載されています。そのため、ケーブル配線はますます複雑化しています。
個々のシリーズは数千個単位で製造されます。Nordex社の主要生産拠点では、ナセルハウジングやローターブレードのほか、制御盤も製造がおこなわれ、約100人のスタッフが従事しています。
5つのラインでは、最大30台の制御盤がスキッドでステーションからステーションへと移動しながら完成していきます。エキスパートエンジニアのWolfgang Conrad氏は「各ナセルハウジングには、センターボックスに加えて、ヨー、アジマス、ピッチ駆動などの各機能に対応した7台の分散型キャビネットとコントロールボックスが設置されています。ここではリタール社製のキャビネットが使用されています。」
EPLANを最大限に活用
同社の電気設計者は、開発を可能な限り標準化し、どんなに小さなことでもEPLANプラットフォーム内に関連付けすることにしています。
「我々の目標は、EPLANを最大限に活用し、可能な限り開発・生産の標準化を行うことです。」Wolfgang Conrad氏
これは、同社の部品表や回路図が非常に高品質で詳細であることからもわかります。使用されているすべての部品は、ネジやナット、ワッシャーといった小さな部品に至るまで、すべて部品データとして登録され、プロジェクトに割り当てられます。もし、割り当てられていない部品や位置情報のない部品があっても、そのほかすべての部品情報がそれぞれつながっているため、すぐに気づくことができます。
これは、制御盤に必要な板金加工にも当てはまります。
開発エンジニアのEnrico Durkaは次のように述べています。
「EPLAN Pro Panelから穴あけパターンを生成し、DXFファイルとして加工機に直接送信しています。」
これにより、穴あけ加工された制御盤の(社内)納期は、数週間から48時間、最長でも1週間に短縮されました。
EPLAN Pro Panel:自動3Dルーティング
Nordexの電気設計者は、EPLAN Pro Panel とEPLAN Smart Wiringを活用しています。
EPLAN Smart Wiringで使用する、3D実装レイアウトのデータと回路図の接続情報はEPLAN Pro Panelで設計します。
この設計方法を導入したことにより、精密な3Dレイアウト設計を活用し、詳細なルーティング、ワイヤー長が設計段階で算出することが可能になりました。そのデータは、外部の加工機に送信されます。
Wolfgang Conrad氏は、「我々は、EPLAN Pro PanelとSmart Wiringを使って、新しい制御盤を設計しています。これらは非常に高い品質基準を可能にします。」
EPLAN Harness proDを使用:約120mの配線 誤算はわずか数センチ
EPLAN Pro Panelで効果を得た経験から、Nordexは3Dモデルでのタワーへのケーブル・ルーティングのため、EPLAN Harness proDを導入しました。
ワイヤーハーネス設計担当のMartin Richter氏は次のように説明します。
「ドライブトレインはナセルの中央に配置されており、ワイヤーハーネスは内側の丸みを帯びたパネルに配線されています。そのため、長さを決めるのは非常に困難です。」
各ケーブルは、16のパラメータに基づいて指定されます。ソース/シンク、コントロールポイント、曲げ半径などです。ケーブルタイやアースストラップの位置も正確に定義されています。その結果、すべてのワイヤーの長さ、コネクターの種類、ラベリングなどが明確で一貫性のあるものになりました、と述べています。
写真:ナセルハウジング内にはスペースがありません。そのため、8台の分散型制御盤へのワイヤーハーネスは、丸みを帯びたナセルの壁面に配線されています。
「人間による作業」と「機械による作業」の比較実験
EPLAN Harness proDの導入にあたり、同社は「人間による作業」と「機械による作業」の比較をしました。
Martin Richter氏「課題は、プロトタイプのナセルハウジングを計測し、パネルに沿って走る50本のケーブルの長さを決めることでした。
製造部門の2人の従業員は、正確な寸法を決めるために1日を必要としました。EPLAN Harness proDを使ったところ、作業時間は3分の1で済みました。」
タワー用ワイヤーハーネスでも同様のテストが行われ、結果は同じでした。
写真:Nordex社では、ナセルハウジングの製造にもこの方法が採用されています。
「ここでは、27本のケーブルを1相あたり約120mの長さで配線する必要がありますが、誤算はわずか数センチの範囲でした。ルーティングトラックは常に正確にフィットしているので、非常に長いケーブルであっても余分な配線を計画する必要はありません。」
この経験をもとに、Nordex社の設計者は、タワー内のケーブルダクトをソース・ターゲット配線として制御盤まで配線するようになりました。
写真:ハブの代表的なワイヤーハーネス。EPLAN Harness proDを使用しています。
目標:タービン全体のデジタル表現
EPLAN プラットフォームの導入により、Nordex社は、風力タービン全体のデジタル化という目標に近づいています。
Dr. Klaus Faltin氏は、「コンピュータにシステムの "デジタルモックアップ "があれば、実際のプロトタイプがなくても、生産のための最初の“プロトタイプ“を作ることができます」と述べています。
EPLANで作成されたデータは、設計目的以外にも使用されます。Dr. Klaus Faltin氏は、「将来的には、EPLAN Viewerを生産ラインで直接使用したいと思っています。現在はテスト段階に入っています。」と語っています。