Sto社は、塗料やワニス、コーティングシステム、断熱材など、不動産業界が緊急に必要としているものを提供しています。しかし、需要の高まりにより、バーデン・ヴュルテンベルク州にある本社の生産能力は限界に近づいていました。生産工場の1つを改修するために、Sto社はEPLANエンジニアリング・ソリューションの使用を決定しました。
スイスの対岸、シュテューリンゲンに本社を構えるSto社。このメーカーは、現在、塗料、プラスター、ワニス、コーティング剤、断熱複合システムで世界中に知られています。Stoは、気候変動で製品が受ける影響を軽減するために、研究開発に多大な投資を行っています。目標は、持続可能な原材料と断熱システムの容易なリサイクル性、そしてエネルギー効率と資源効率を可能な限り高めた安全な生産です。
配管や機器のフロー図全体は、紙やExcelファイルにしか存在しなかった
Sto社が製造の効率化と性能向上に取り組んだのは、高性能工場「プロダクション3」です。プロダクション3はシュテューリンゲンの総生産量に占めるトン数の割合が最も多い工場です。1980年に建設されたこの工場は、10年後に改修工事を行い、生産ラインにプロセスの自動化を導入しました。シュテューリンゲンのプラント計画と自動化の責任者であり、EPLANに関するすべてを担当する同社の社員Joachim Hauschel氏は、「この工場は非常に長い間、優れた仕組みでした。」と説明します。
しかし、年月が経つにつれ、問題は山積してきました。I&C(Instrumentation and Control)コンポーネントのスペアパーツを入手するのが難しくなりました。製品ポートフォリオの増加も製造上の課題となっていました。
「研究室で新製品が開発され、市場に投入されるたびに、タンクファームに新しい原料を入れるスペースを確保したり、容量を増やしたり、新しい配管を敷設したりしなければなりません。プラントシステムは常に進化しているのです。」Hauschel氏
プロセスエンジニアリングの範囲が常に拡大することで、老朽化したプロセス制御システムも限界に達していたといいます。
2019年、生産能力の拡張と自動化システムの更新が、ついに避けられなくなりました。しかし、配管や機器のフロー図全体は、紙やExcelファイルにしか存在せず、しかも変更時に更新されることがなかったため、その時点では不十分な情報しかありませんでした。
メンテナンス作業やプロセスの調整時、プラントの担当者が現地で配管システムのマッピングを行わなければならないという事態に直面することもあります。「私は、配管の延長を5回歩いて確認しましたが、配管の継ぎ目を見落としたりして、5回とも異なる結果になりました。」とHauschel氏は言います。
EPLAN Electric P8で500以上の電気回路図を作成
Hauschel氏は、1つのソースですべてを提供できる統一されたプラットフォームを探していました。信頼できるデータベースを維持することで、スタッフの作業を容易にすること。そして、レトロフィットのために採用した制御システムメーカーに現在の生産プロセス及びシステムの構成とその改修されるべき目標状態を正確に表現するためです。
EPLANはあらゆる産業分野のデジタル化を可能にするプラットフォームを提供しており、Sto社の要求にマッチしていました。EPLAN Electric P8は、回路図を作成するための最適なソリューションで、EPLAN Preplanningは、電気設計から流体動力システム、P&Iに至るまで、すべての計画・設計段階を通じてエンジニアリングデータをデジタルで収集し、試運転、運用、さらにはメンテナンスにも使用できます。
Stoの担当者がPreplanningを調べると、Hauschel氏が以前のプロジェクトで知り合ったサービスプロバイダー、Kaltschmid Industrial Engineering社が、電気設計をはじめとするすべてのエンジニアリングプロセスでEPLANを使用していました。この経緯もあり、Kaltschmid社とPreplanningを使いプラントシステムのレトロフィットのためのプロセスエンジニアリング計画を共同で行うことになりました。
EPLAN Preplanningで3つの生産プラントのP&Iダイアグラムを描写
Preplanningにより、事前の計画段階でエンジニアリングデータの収集を開始することができました。また、統合された機能により、改修に必要なタイトなスケジュールを守ることができました。
そんな中、納期という時間的制約もありましたが、Kaltschmid社は、Sto社の生産設備にあるバタフライバルブが、すべて空気圧アクチュエーターで制御されていると理由で、統合されたデータベースに流体動力技術を含めることを推奨しました。
電気設計と流体動力設計も盛り込むことで、エンジニアリングプロセスだけでなく、日常の製造プロセスも非常にシンプルになるという考えにHauschel氏は納得し、電気設計やP&Iだけでなく、EPLAN Fluidの流体動力設計も全体のレトロフィット・プロジェクトの一部として使われることになりました。
常に最新のドキュメントを提供できるEPLANのプロジェクト
9ヶ月の計画と3ヶ月の工事を経て、2020年1月、レトロフィットされたシステムは通常運転に入りました。
ジャストインタイム生産のため、プラントエンジニアリングチームは、常に98.5%のシステム稼働率を保証できなければなりません。そのため、Stoのスペシャリストたちは、24時間体制でオンコールサービスを行うことにしています。工場のどこかで問題が発生した場合、30分以内に従業員が駆けつけ、できるだけ早く生産を再開できるようにしなければなりません。
そのため、常に最新のドキュメントを提供することが重要な仕様の一つでした。どの部品がどこに設置され、どのように他の部品と接続されているかを明確に示すドキュメントでなければならないということです。「EPLANは、この要求をクリアしています。」とHauschel氏は言います。
EPLANはプロジェクトを視覚化し、理解しやすくするのに役立っています。
「EPLAN Preplanning、Electric P8、Fluidの三位一体による最大のメリットは、すべての設計を自分たちで行い、変更も加えることができることです。」Hauschel氏
日常業務で50%の時間短縮を実現
データ管理については、プロジェクト開始当初からEPLANツールが最重要視されていました。
Hauschel氏によれば、テキスト、オペレーション機器のラベル、その他のメモなど、あらゆる場所で処理されるすべてのデータは、EPLANから他のシステムにエクスポートされ、すべてが常に同期されています。プロセス技術や生産における制御の変更は日常業務の一部であるため、彼は毎日Outlook、Teams、というツールと一緒にEPLANも立ち上げて作業しています。
EPLAN Preplanning、Electric P8、Fluidをパッケージで使うことにした結果について聞かれたHauschel氏は、即答します。
「時間の節約は、少なくとも50%以上です。以前は、問題を見つけるために工場内を歩き回らなければならないことがよくありました。今はフロー図を見るだけで、すぐに状況を把握することができます。空気圧図が全体の回路図に統合されていて、様々な図面間のジャンプ機能は本当に素晴らしい。」Hauschel氏
EPLANで完全に描かれたプラントの制御盤の1つ。EPLAN Preplanning、Electric P8、Fluidの三位一体の利点は、Stoのエンジニアがすべての計画を実行し、自分で変更することができるようになったことです。© Sto
運用の効率化とその先にあるもの
このシステムは、生産やStoの従業員だけでなく、サプライヤーやメンテナンス会社、その他のサービスプロバイダーも、統合されたデータ管理の恩恵を受けていることいいます。
「信頼性の高いデータベースのおかげで、社内外を問わず、より効率的に仕事ができるようになりました。プラントの一部をメンテナンスする必要がある場合、EPLANで作成されたPDFを見れば、設置されているコンポーネントのリストよりもはるかに包括的な概要をサービスプロバイダーに伝えることができます。」(Hauschel氏)
Sto社のプラントシステムには、EPLAN Electric P8で500以上の回路図が含まれています。生産プラントのうち3つのP&I図はすでにEPLAN Preplanningに描かれており、50の空気圧図は現状でEPLAN Fluidに入力されています。
Hauschel氏は、「システムは常に成長し続けています」と言います。何しろ、変更と拡張は彼の日常業務の一部なのですから。「そして今、EPLANなしではこの日常業務を想像することは不可能です」。
まとめ - EPLANを使ったStoでのレトロフィット
- 最大1,000トン/日の処理能力を持つ生産設備のレトロフィット
- EPLAN Preplanningで3つの生産プラントのP&Iダイアグラムを描写
- EPLAN Electric P8で500以上の電気回路図を作成
- 98.5パーセントのプラント稼働率を確保
- プランニングと自動化により50%以上の時間短縮を実現